2011年1月20日木曜日

解離に関する断章 その11. 火山モデルを用いた治療原則 ― 特に休火山の取り扱いについて

ある火山が、現在死火山の状態なのか休火山なのか、という区別は重要である。死火山ならもう噴火する可能性はないことになる。しかし休火山の場合は、それがどの程度将来噴火する可能性があるのかを見極めることが重要である。休火山は放置しておいても死火山になっていく可能性がある。ところがやがて再び噴火する可能性もある。後者の可能性が高いと考えられる場合は噴火を回避するために、早めに手を打っておく必要があるだろう。例えば軽い地殻変動による刺激を人工的に起こすことで、余計な歪みを解放し、本格的な噴火を防ぐことが出来るかも知れない。しかし場合によってはその刺激により、結果的に本格的な噴火を引き起こしてしまうかも知れない。
この例えを解離に当てはめるならば次のようになる。たとえば時々仕事中に飛び出してきて、職務を妨害するような子供の人格を考える。このところあまり姿を表すことがなく、このままおとなしくなってくれるかも知れない。しかしこれからさらにストレスの大きい仕事にかかわることになった場合、その人格が賦活化されることが十分予想される。そこで治療において早めにその人格を扱っておくということが重要になってくる。
ただしその為にその子供の人格を治療中に呼び出すことは、その人格の出現をある程度習慣化させることにつながりかねない。もちろんそうすることは、その人格がこれまで抑制されていた自己主張をある程度までまとまった形で行うことを保証する意味を持ち、合目的的かも知れない。しかしその間その人の社会適応レベルはある程度低下することを覚悟しなくてはならないのである。