2010年12月6日月曜日

シリーズ 「怠け病」はあるのか?

事典項目【ミュンヒハウゼン症候群】について書いていてわからなくなってしまった。ミュンヒハウゼン症候群に代表されるいわゆる虚偽性障害は、詐病(病気のフリをすること)とは違う。詐病の場合は、病気のフリをすることで実利を得ることを目的とする。だから詐病は実は「病気」ではない。DSMもそこら辺は考えているようで、「V65.2」というコードを与えられ、「臨床上注目される状態」となっている。どうでもいいようだが、とても大事なテーマだ。 虚偽性障害は詐病とは違い、一応病気として扱われる。どうして同じように病気の不利をしているのに、詐病だと病気ではなく、虚偽性障害は病気扱いされるかというと・・・・・・。これが実はよくわからない。一応理屈からいうと、虚偽性の場合には、病気の不利をするが、別に実利を追求しない、というところが・・・・・・病的なのだ。普通はしないことだからということである。病気のフリをして病院に入り、ケアをしてもらうことをなぜ人はしないか、というとそれが何の特にもならないだけではなく、むしろ不利になるからだろう。
その意味ではミュンヒハウゼン症候群は、自傷行為にも似ている。自分の手を切る、髪の毛をむしるということは自己を痛めつける行為であり、普通の人はやらない。それと同様に、自ら進んで自分に病気の状態を作り、病院に入るのも普通の人はやらないことだから、病気として扱うというわけだ。それはそうだろう。誰だってバイキンの混じった水を自分に注射したり、捻挫をわざとしては救急を訪れるのは、普通はいやだ。自分に痛いことをする人はよほどの変わり者、正常とはいえない状態、つまり病気だということになる。
さてここからがわからないところだ。病院に入り、包帯を巻いてもらい、三食を出されることは自傷行為に本当に似ているのだろうか?むしろ詐病に似てはいまいか?つまり虚偽性障害の中で、それほど「痛くない」状態があり、それは明らかな虚偽性障害と詐病の中間くらいに位置することになる。こんな感じになる。

 
 典型的な虚偽性障害 ・・・・ 明らかに「痛い」こと、たとえば傷口を汚い手で触ってわざと化膿さ
                   せて病院でケアをしてもらう、など。
 典型的な詐病 ・・・・ あまり痛いことはせず、もっぱら病気であると申し立てて、傷病手当をもら
               う、など。
 中間の状態 ・・・・ あまり痛いことを自らにせず、病院でケアをしてもらうこと。
 つまり中間な状態とは、実はそこに「実利」に少し近いことがあたかも報酬のように与えられ、それでも普通の人は満足しないにもかかわらず、当人はそれをよしとしてしまう状態だ。

 
わかりやすくいえば、病院という場所が好きでしょうがない人、看護婦さんに包帯を巻いてもらうことが喜びである人の場合、その虚偽性障害は詐病とほとんど変わらなくなってしまうのではないか、という問題が生じてくるのだ。
さてこれほど長々と前置きをしたが、この「中間の状態」は冒頭の「怠け病」に近づいてくるのである。そして怠け病とは、現在極めて増加しているといわれている「新型うつ病」の一つの見え方なのである。(続く。そりゃそうだろう。)