2010年9月12日日曜日

快楽の条件 5. 自分が持っているものは、もはや快楽的ではない

名古屋への出張(日帰り)。予想していたとはいえ、やたらと暑かった。
アマゾンの電子書籍「キンドル」を使い始めた。早速試しに本(キンドル版)を一冊買ってダウンロード。帰りの新幹線の中で使ってみる。絶対に読書に入っていけないと思っていたが、なんとアンダーラインが引く機能がある事がわかって、線を引きながら読む感覚がすこし味わえた。

快楽原則の5として、私が挙げたいのが、人間の持つ性(さが)とも言える性質である。それは自分たちが持っていることに決して感謝することが出来ず、持っていないことの不幸をもっぱらかこつということだ。私たちはA、B、Cを持っていても、それを持つことに感謝するのではなく、D、E、Fをもっていないことを悔やみ、自分が不幸である根拠とする。それはA、B、Cを持つことの快感はもう既に体験し終えているからだ。私たちが自分の持てるものを感謝する能力があれば、どれだけ幸せになれることだろう。私は「寡黙なる巨人」(多田富雄)のことが頭を離れないということを以前に書いたと思うが、脳梗塞に襲われた彼は、「ものを飲み込む事ができる」人がとてつもなく幸運であると感じられる境遇になってしまった。(さっそうと世界を飛び回っていた彼は、68歳のその日から、ひとりで歩くことも出来ないだけでなく、一匙の水にも「溺れて」しまうようになったのだ。)それも人生なのである。人の幸せはまったくの相対的なものである事がわかる。人は失った瞬間から、それを持っている人を羨み、持っていた時の自分に戻ることを熱望する。