オタク系の能力の特徴、すなわち受身的に外部から形式を取り入れることに快感を得るという特徴は、実は私たちが幼少時に発揮する様々な能力、例えば言語能力の獲得と似ていることがわかる。言語の獲得に関して、子供は天才的である。少しでも外国語の習得に苦労した人には、このことは容易に理解できるはずである。30才を過ぎて海外に出ると、そこで学び始めた外国語の単語一つを覚えるのでさえ大変である。その国の言葉の発音についても、類似の子音や母音を母国語に持たない場合は至難である。(圧倒的に、母音、子音の少ない日本語の場合、それを母国語に持つ私たちが外国語のマスターに手間取るのは、もはや必然的といわざるを得ない。)ところが一緒に外国にわたった四,五歳の子供は、現地校に入ってほんの数カ月で、すでに会話程度に不自由を覚えないほどにその外国語をマスターしているのである。
一般に私たちは幼少時に、特に苦労すること泣く、極く自然に言葉をマスターする。おそらく言葉は容易に脳に入ってきて、緩やかな快感を伴って脳に定着する。だから子供は親や兄弟の話し言葉に食い入るように注意を受け、それを取り入れる。これ自体は非常にアスペルガー的なプロセスである。
結局私は何が言いたいのかといえば、アスペルガー的な脳の働きは、実は私たちの幼少児にはごく自然に起きていることだということである。子供がモノに凝る、ということはある意味で自然だ。遊戯王カードや機関車トーマスの数多くの登場人物の名前をあっという間に覚えてしまうあの集中の度合いは「サバン的」とも言えるだろう。その勢いで虫に懲り、切手に懲り、カードゲームに懲り、ということを大人になっても続けていると、オタクと呼ばれてしまうわけだ。