これも依頼論文である。もう書くものが多すぎて訳が分からなくなってきた。
本章は 「Ⅲ さまざまな精神疾患に対する精神療法」の第13番目として位置づけられる。扱う対象はパーソナリティ障害(personality disorder, 以下PD)ただ他章の統合失調症やパニック症などに比べ、本章ではDSM-5のカテゴリカルモデルに従っただけでも10という大所帯である。従ってPDの治療に関する議論も多岐にわたるため、ここではBPD, NPD, ASPおよびCPTSDの4項目に限定して論じることにしたい。(最後のCPTSDはもちろんPDの一つとは数えられないが、CPTSDの有するパーソナリティへの表れについて考えると本章で特筆する価値はあるものと思われる。
PDの治療論として特にBPDが筆頭に挙げられるのにはそれなりの経緯がある。歴史的には主として神経症の治療として出発した精神分析がその対象を広げ、またその方法論を変更する必要に迫られたのは、1960年代にはじまるBPDの概念への注目やその治療についての模索が始まったからである。その過程でカンバーグやマスタ-ソン等により唱えられたBPDの治療論はNPD等により応用される一方ではDSM-ⅢによるカテゴリカルなPD論の整備がなされたのである。その意味ではPDの精神療法に関する議論はPDに関する理論から派生したものと考えられよう。