2024年6月27日木曜日

PDの臨床教育 推敲 9

  とくにInselはDSMが神経科学や遺伝学の新たなる知見を取り入れていないという主張を行った。そして実際DSMによる診断は何よりも信頼性と妥当性に問題があったと言われるのである。そしてDSMの代わりにNIMHが開発しようとしたのがこのRDoCなのであるが、その一番の特徴が、ディメンショナルなアプローチということなのだ。彼はDSMが客観的な検査所見によらずに、いまだに臨床症状に基づいてなされると批判したのである。

 でもこれは一見して臨床向きではないな、ということが分かる。そしてそれがディメンショナルモデルを目にした時の感想と同じなのだ。

研究領域としてはネガティブ系、ポジティブ系、認知系、社会系、覚醒・制御系と別れる・・・・。これらの問題の組み合わせとして具体的な疾患が表現されるということだろうか。つまりこれらの障害はいくつかの精神疾患に共通してみられるという見方でもある。しかしだいたい脳の機能から疾患を分類するという方向性が私は間違っていると思う。なぜなら脳科学がそこまでは進歩していないからだ。だいたい抗鬱剤がどうやって効くのかについてさえ、はっきりしたことは分かっていないのである。

 ちなみにDSM-5自体が、内部でのカテゴリカル派とディメンショナル派の対立の末の妥協の産物ということが分かる。たとえばよく見るとDSM-5には統合失調症スペクトラムという分類のもとに、統合失調型パーソナリティ症が入り込んでいるが、これは以前ならパーソナリティ障害の項目に分類されていたものである。だからこれも診断横断的な見方の表れといえるだろうか。つまりこれもディメンショナルな方向性を示していたことになる。

ちなみにこの問題の背景には、医師 ⇔ 研究者(主として非医師)の対立がある気がする…