2023年8月3日木曜日

連載エッセイ 7の3

 この分離脳の問題、かなり重要なので少し掘り下げて考えてみることにした。

 ちなみにこの分離脳研究の第一人者のマイケル・ガザーニガ先生は、ジョーという男性と二人三脚で研究を進めている。羨ましい限りだ。その様子はユーチューブで見ることが出来るが、とても興味深い。一つ興味深かったのは、ジョーは左脳と右脳に入った内容を、左右の手で別々に描くことが出来ている。右手で三角を、左手で四角を同時に描くのだ。これを何不自由なく出来るということは、左右脳がお互いに干渉しないからだ。ということはそれぞれの半球は,独自に動き、それに疑問を感じていないということである。ということは、私達が悩むのは、やはり脳梁で左右脳が繋がっているからと考えることが出来るであろう。またもう一つ特徴的なのは、分離脳を持った人は、そのことに違和感を感じていないことだ。つまり二つの考えに引き裂かれて悩むことはない。おそらくそれは一つには左右脳に引き裂かれることがもうないからだと言えよう。この様子から私たちの心の在り方を根本的に考え直すヒントが得られる。以下、ネットのNature Digest, Vol. 9 No. 6 NEWS FEATURE 「分離脳」が教えてくれたことを参考にする。https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v9/n6/%E3%80%8C%E5%88%86%E9%9B%A2%E8%84%B3%E3%80%8D%E3%81%8C%E6%95%99%E3%81%88%E3%81%A6%E3%81%8F%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%81%93%E3%81%A8/36734

 先ほど述べた、患者は脳の分離に違和感を感じていないという件に関して、ガザーニガは次のように言うという。「患者は、不完全な感じがするとは一言も報告しなかったことだ。」「左右の大脳半球は互いに相手を恋しがることはないのだ。」そしてその理由として、左脳はいわば「解釈者」であり、それは、実際に起こったことの説明を考え出したり、次々と入ってくる情報を選別したり、外界を理解する助けになる物語を組み立てたりするために、誰もが利用しているものだ、とのことである。

ともかくも、分離脳においては、左右が共存している。つまり並列処理をしていることになる。それが脳梁で繋がれることで失われると考える根拠はないだろう。