4500字 → 6000字に向けて肉付けしていく。
診断に必須の特徴:
重要な自伝的記憶、特に最近の外傷的ないしはストレスを伴う出来事の健忘(それらを思い出す能力の喪失)がみられ、それは通常の物忘れや疲労などによる集中困難などでは説明できない。記憶の喪失は、個人生活、家族生活、社会生活、学業、職業あるいは他の重要な機能領域において生じ、時には深刻な機能障害をもたらす。同様の健忘はその他の状態、すなわち中枢神経系に作用する物質(アルコールやその他の薬物)の使用、神経系の器質的な疾患(側頭葉てんかん、脳腫瘍、脳炎、頭部外傷など)でも生じうるが、それらは除外される。
解離性遁走の有無:
解離性健忘では、空間的な移動を伴う解離性遁走(自分自身のアイデンティティの感覚を喪失し、数日~数週間ないしはそれ以上にわたって、家、職場、または重要な他者のもとを突然離れて放浪すること)を伴う場合がある。
診断的特徴
解離性健忘においては解離の機制の関与が前提であり、記憶内容が心のどこかに隔離され保存されていることになる。すなわち健忘の対象となる出来事の最中に別の人格状態になり、そこで記憶されたことを、もとの人格状態に戻った際に想起できないという形をとる。ただし通常の人格状態で記憶されたことを、後に別の人格状態になった際に想起できないということもあり、その場合は解離性同一性障害との鑑別が重要となる。これらの記憶内容は、催眠その他により一部が想起可能となる可能性がある。しかし当人がその出来事の際に解離性のトランス状態や昏迷状態にあり、記銘力そのものが低下している場合には、その出来事の想起はそれだけ損なわれることになる。
一般的に情緒が強く動かされる体験はより強く記銘される傾向にあるが、トラウマやストレスにより強く偏桃核が刺激された際には記銘の際に重要な役割を果たす海馬が強く抑制されることで、自伝的記憶部分については記銘自体が損なわれることにもなりうる。するとその出来事のうち情緒的な部分のみが心に刻印され、自伝的な部分を欠いた、いわゆるトラウマ記憶の生成が起きる。するとその記憶はそれに関するエピソードとしては想起できないものの、感覚的、情緒的部分のみが断片化して突然フラッシュバックや悪夢等の形でよみがえることが知られている。