2021年4月8日木曜日

解離性健忘 3

 テキストを書くのも面白くなってきた。DSMと表題だけ同じで、ほとんどリライトしている。

選択的健忘.においては,ある限定された期間の特定の状況や文脈で起きた事柄を想起できない。例えば職場でトラウマ的なかかわりを受けた上司のみを思い出せないとか、学校のクラブ活動でトラウマ体験があった場合、その頃の生活全般は想起できても、そのクラブ活動にかかわった顧問や仲間、あるいはその活動そのものを思い出せないということが生じる。

全般性健忘は自分の生活史に関する記憶の完全な欠落である。いわゆる全生活史健忘、あるいは解離性遁走と呼ばれる病態を包括する。通常その発症は突然であり、健忘の期間にも個人差はあるが通常は数時間から数日、時には数か月も及ぶことがある。我に返った時には自分についての個人史的な情報、時には名前さえも想起できないことがあり、当人は通常は困惑感を持つ。それ以降に回復する記憶にも個人差があり、時には発症の期間も含めた過去の記憶を回復しないままでその後の人生を送ることもある。その際はその期間に社会で起きたことも含めて想起できない。事例によっては発症時までの記憶を回復するが、発症(遁走)期間のことまで想起することはまれである。発症期間中は意識混濁のためにそもそも記銘されていない可能性すらある。ちなみに健忘の対象はエピソード記憶に限られ、スキルについては残存していることが多い。