2020年9月28日月曜日

治療論 6

 

●統合か協調かのスペクトラム これについてもblue book Ira Brenner, p.217

治療に関して統合に向かうか、個々の尊重かというテーマもまた転回の大きなテーマと言える。

交代人格をどのように理解し、取り扱うかについては、指揮者によって大きなばらつきがあるという事である。具体的には個々の人格を、これから統一されるべき、それ自身は部分ないしは断片と見なすか、それともその人格が一つのそれ自身が独立した人格としてとらえるか、である。スターンとブロンバーグはその中でもフロイトの抑圧の概念にまでさかのぼってこの問題を考えた。彼らはウィニコットやサリバンの概念をもとにして解離の概念を再生したのである。その基本概念は、解離されていたものがエナクトメントとして現れるという議論で、その立場はブロンバーグもスターンも変わらない。解離されているものは未構成の思考という事になる。しかしそれは別の人格によっては体験されている可能性がある。

かつて Van der Hart (2009) 先生は精神分析外の解離の扱いに二つの方向性があると述べた。

   統合された機能が、ストレスに直面して失われた状態。

   同時進行の個別の、分割された神的な構造、パーソナリティないしは意識の流れ。

問題は精神分析においても①,②の両方の傾向が見られるという事である。歴史的にはこのうち①が主流であり、それは今でも続いている。ところがそこに②の考え方が流れ込み、実は両者が共存状態になっているのである。