2020年1月12日日曜日

顕著なパーソナリティ特性 3


 そもそも書いていてつくづく思うのだが、そして白状しなくてはならないのだが、私は性格特性の因子モデルとやらが実はよく分かっていない。というか、疑っている。
  性格特性とはこんなことだ。
 人には性格というものがある(らしい)。それを分類するにあたって、どのような因子を取り出せばいいのだろうか? これは簡単なようでいて難しい。例えば怒りっぽさとイライラ度という二つの因子を抽出するのはあまり意味がない。大体の人は二つとも高いか、それとも低いか、ということになり、要するに互いが独立変数になっていない。優しさと厳しさはどうか。でも優しいけれど厳しい人もいるし。人によって態度を変える人もいるし・・・・。ということで最終的に統計的な手法を使って絞ったのが、因子モデルというわけだ。
 まあそのくらいのことは私にもわかる。でもこの5 つにどこまで信ぴょう性があるのだろうか?
そこでいろいろ ICD-11 PD に関する論文を読んでいくうちに、だんだんこの論文を書くことがいかに大変かが分かってきた。何しろ2018年の6月にこれが発行になったわけだが、電子版でしかでていない。まあこれはだれでもアクセスできるという意味ではありがたいのだが、なんだかアップデートされていく雰囲気なのだ。今ネットで調べているのは、20194月に改訂になっている。つまりこの論文では、発行されたばかりの出来立てホヤホヤの診断基準について教科書的なことを書かなくてはならないのだ。これは悠長にブログで書く場合ではない。と言いつつも、ほかの方法はないので続けるしかないが。
ということで少し焦りを感じて、何をすべきかを考えた。そしてどうやら私がすべきなのは、このネットで、そしてもちろん英語でしか見ることのできない「否定的感情、離隔、非社会性、脱抑制、制縛性」という特性を和訳することらしいということに気が付いた。もちろん誰もその訳を発表していないのだ。まあそれでこの論文の一つの役割は果たせるということになるのかもしれない。
そこで早速、「否定的感情」から。

パーソナリティ障害やパーソナリティの問題 personality difficulty における否定的な感情
  否定的感情の特性域 trait domain の中核となる特徴は、広範囲にわたる陰性の情動 negative emotions [訳注 否定的、という訳よりは陰性の、のほうがより適切と思われる]を体験する傾向である。否定的感情は、それがある時点においてある個人にすべて表出されるわけではないが、以下のような共通した表現を伴う。広い範囲にわたる陰性の情動が、その状況に不釣り合いなほどの頻度や強度をもって体験されること・情動の不安定さ emotional labilityと感情のコントロールの乏しさ・悲観的な態度 negativistic attitudes低い自尊心や自信・他人への不信感 mistrustfulness

 やっぱり「negative」 は、否定的、というより陰性の、という訳のほうが少しいいような気がする。例えば怒りは、否定的感情、というよりは陰性の感情と言うほうが、少しだけよくないだろうか?

ちなみに原文は以下の通り。
6D11.0 Negative affectivity in personality disorder or personality difficulty
The core feature of the Negative Affectivity trait domain is the tendency to experience a broad range of negative emotions. Common manifestations of Negative Affectivity, not all of which may be present in a given individual at a given time, include: experiencing a broad range of negative emotions with a frequency and intensity out of proportion to the situation; emotional lability and poor emotion regulation; negativistic attitudes; low self-esteem and self-confidence; and mistrustfulness.