2017年4月3日月曜日

脳科学と精神分析 ②

  近年提唱されている非線形的な心の在り方は、それまでの精神分析的な考え方と大きく異なる。従来の精神分析的な考え方は、後成的前提 epigenetic assumption に従ったものであり、( Galatzer-Levy, RM (2004) Chaotic possibilities: Toward a new model of development International Journal of Psycho-Analysis, 85(2):419-441.) ある内的なプログラムが既にあって、それに従って予測可能な形で病理が発現していく。フェレンチが「結局すべて数字で決められているんだよね」、ということを考えていたのもこれだったし、フロイトがコンプレックスについて考えたこともこれに類するといえるだろう。ところが正常な発達や精神生活を特徴づけるのは不連続性なのである(Emde, Spicer, 2000そしてそこで決定的な影響を与えるのは養育を含めた外的な出来事なのである。
 この問題と先ほどの非線形性との関連がお分かりであろうか?心はほっておいても、内的な運動のみでもすでに非線形的である。