2017年3月17日金曜日

精神分析家は何か ⑥

さて会話はこれで済んでしまうのかもしれません。夫婦の間でいろいろな会話が起き、心の底を吐露しあう、ということは普通は起きないのです。ただその代わり、私たちはそれを職場の同僚などに話すのです。気のおけない、そして一緒にいて安心感を覚える、そしてそれを話してもおかしな人と思わないような、こちらの弱みを見せてもいいような人を選ぶのです。たとえばAさんは職場の上司を選びました。
夫は職場で比較的面倒見のいい上司に、昼食時にその話をする。
A「妻にそう言われた時、どうしてそんな風にとるのだろう?と思いましたよ。」
上司「それで奥さんに何か言い返したの?」
A「いや別に何も言い返しませんでしたが…」
上司(半ばからかうように。)「日ごろのキミの行いがよくないんじゃないの・・」A「・・・・・」上司「まあ、冗談だが、あまり信用されていない上だね。でもそんなに深く考えることもないよ。俺なんて、うちではほとんど会話がないよ。それに比べれば羨ましいもんだ。」
Aさんはおそらく上司にそう言ってもらえて、なんとなく気が楽になるとともに、少し見えてくる部分もありました。カミさんにあまり信用されていないらしいということはその通りだと思いましたが、それを気にするというのもあまり必要がない、ということが分かりました。
ところがそこで話は終わりません。実はAさんは分析を受けていたのです。
そうAさんは精神分析のトレーニングを受けていたのです。
それからAさんは分析家のもとに向かう。その頃は妻とのエピソードのことを忘れかけていたが、自由連想の中で記憶がよみがえってくる。
A「朝、こんなことがあったのです。(と説明する。)」
分析家 「それであなたはどんなことを考えますか?」