2016年4月22日金曜日

フロー体験 ⑥

フローの体験のとき脳で起きていること

では脳の中では何が起きているのだろうか?これに関してはいくつかの研究があるようだ。研究のデザインとしては、被検者に人工的にフロー体験を創り出し、そのときの様子をMRIで探るという手法である。フロー体験とはそんなに簡単に出来るのか、ということになるが、チク先生の、フロー体験はスキルとチャレンジのバランスだ、という定義の仕方を思い出そう。このおかげで、被検者に何らかのタスクをしてもらい、それが簡単すぎる場合と難しい過ぎる場合、そしてその難易度を自分で調整できて好きなレベルでやれる場合という3つの状況を作り出し、三番目がよりフローに近いものと見なすという手法がとられている。

Ulricha, M., Kellerb, J., Hoenigc, K. et al. (2014) Neural correlates of experimentally induced flow experiences. NeuroImage, 86: 194–202. という論文をもとに解説しよう。彼らは27名の被検者に退屈に感じるようなもの boredom、きついものoverload, そしてフローを新たすようなちょうどいい難しさの計算のタスクを与えた。その結果、フローの際は、左下前頭回(IFG)と左被殻の活動が増した。同時に内側前頭前皮質(MPFC)と扁桃核の活動が低下した。ここで被殻の活動の増加は、結果予測のコーディングの上昇coding of increased outcome probability、左前頭回の活動の増加は、認知的なコントロールの深い感覚deeper sense of cognitive control内側前頭前皮質(MPFC)の低下は、自己言及的な情報処理 decreased self-referential processing、扁桃核の活動が低下は、ネガティブな体験の低下 decreased negative arousal を表す・・・と言われてもねえ。まあ何となくわかるのは、扁桃核の活動低下。フロー体験が恐怖や不安とは縁遠い体験であることを示している、ということだ。