2016年2月16日火曜日

報酬系と心(9)

<報酬系の脳内基盤>
ニューロサイコアナリシスの分野では、パンクセップという学者が、報酬系に注目している。「ニューロサイコアナリシスへの招待」(岸本寛史編著、誠信書房、2015)を参考にする。彼はSeeking システムという脳内システムを考えた。これは最も基本的な情動指令システムであり、あらゆるものが目的となるという。そして従来は「報酬系」と呼ばれたものだとする。この探求 seeking システムというのは優れたネーミングであり、実際に報酬系は特定の対象を持たず、ただその満足を追い求めるシステムなのだ。
ここでseeking システムの具体的な神経回路を示すならば、中脳の腹側被蓋野(VTA)から前頭葉へと投射される中脳皮質系と、VTAから側坐核へと投射するドーパミン作動神経、ということになる。・・・・・
大体通常の脳科学の教科書ならここで終わるのだが、この報酬系の場所がわかったからと言って、いったいどうだというのだろう?これまでの様々な脳科学的研究により、脳のどこを刺激したら快感ないしは不快が生じるのか、ということを私たちは知るようになってきている。それがたとえばパンクセップの言うseeking システムというわけだ。しかし最も根本的な問題、すなわち快感とは何か、ということについては、何一つなぞは解明されていない。
生命体の驚くべきことは、この脳のごく一部の報酬系を興奮させるために、あらゆる行動が構成されるということである。これが存在することで、捕食や生殖行動が可能となる。この仕組みは考えれば考えるほど不思議であり、かつ複雑である。それは同様のプログラムを人工知能に作ることを考えればいいであろう。
ここで次の様な仮説を考えてみる。ロボットのプログラムを、一定の行動をした場合にそれが特定の回路Reward)を興奮させ、それによりその行動がより頻回に起きるようにセットする。様はポジティブフィードバックループをいくつも作るのだ。たとえばそのロボットは充電機に触れることでRが興奮し、それがその行動、すなわち充電器に触れる行動を強化する。ただしそのままだと充電器に触れたままになってしまうので、一定の電圧まで充電すると、Rの興奮が止まる仕組みを作らなくてはならない。(ところで最近のルンバってそうなっているのかな?)これはある種の単純な報酬系をロボットに組み込んだことになるのだろうか? 否、到底ルンバが充電エリアに戻ってくることで快感を得ているとは思えないのだ。