2013年8月16日金曜日

解離の治療論 子供の人格について (7)

突然だがユーミンの「霧雨で見えない」はつくづく名曲である!(アルバム「ダイアモンドダストが消えぬまに」の最後の曲) いくら彼女の声が出にくくても、この曲作りですべて許せる。

子供人格の「定着」を促進するべきか、回避するべきかは、結局はとても相対的な問題である。ケースバイケースであり、それが良いことか悪いことかは単純には決められないと言うことだ。
 Aさんの子供人格Aちゃんが、パートナーBさんを訪れることが多くなっている、という同じケースについて考える。それが是か否かは、実はAさんとBさんとの関係だけでなく、Aさんの生活全体を見なくては判断できない。たとえばAさんがパートで本屋さんに勤めているとしよう。週3回、勤務時間は8時間だ。仕事は大体Aさんにはこなせる範囲だが、客がたくさん訪れたり、クレームを付けるお客さんがいたりするとAさんのキャパシティを超えることもある。Aさんは通常は一生懸命おとなの人格で仕事をこなすが、そのようなキャパを超えそうなときになると、時々時々時間が飛んでしまい、気がつくと控え室で横になっているということが起きたりする。すなわちその間解離が生じ、別の人格、たとえばAちゃんの人格が出現するわけである。実際にDIDの方でこのような形で仕事を維持することに困難さを抱えている人も少なくない。

さて問題は、AちゃんのBさんの前での出現が「定着」していることが、Aさんのパート勤務にどのような影響を及ぼしているかなのである。実際にはさまざまな可能性が考えられる。Aちゃんの「出癖」が明らかに仕事の上でも起きてしまっている場合。逆にAちゃんがかえって出なくて住むようになってきている場合。実際にAさんのパートでの仕事のこなし方から、どちらが生じているかを判断するしかない。明らかにAちゃんがパート先も自分のフィールドにし始めている場合には、AちゃんとBさんとの接触は悪影響と言うことになりかねない。
 さて私の臨床経験から言えば、そのようなことは皆無ではないにしてもより少ないように思う。そのような印象があるからこそ、Bさんの前でAちゃんがより多く出るようになってきているという話を聞いても、急いでそれをとめたりはしないのである。それに万が一Aちゃんが仕事の「邪魔」をすることが多くなったとしても、それはおそらく治療者やBさんがAちゃんとそのことについてまず話してみる段階だと考えるべきだろう。