2013年8月24日土曜日

解離の初回面接(4)

現病歴を聴取する際の留意点についていくつか述べておこう。それらは記憶の欠損/交代人格の存在/自傷行為/幼児期のストレスないしはトラウマ/熱中、没頭傾向/離人傾向/性格傾向である。
 記憶の欠損を聞くことは、精神科の初診面接ではとかく忘れられがちであるが、解離性障害の場合には必須となる。記憶の欠損が解離性障害の必要条件というわけではないが、その症状の存在の重要な決め手となる。人格の交代現象やそれに類似した人格状態の変化は、しばしばその時間の間の記憶の欠損を伴うが、そのことを日常生活で直面化させられることはあまりない。患者は多くは物忘れが酷かったり注意が散漫だと思われる一方では、記憶が欠損していることに困惑し、日常生活上の不都合を覚えていることが多い。ただし初診時に患者にいきなり「記憶の欠損はありますか?」と聞くわけではない。「一定期間の事が思い出せない、ということが起きますか? 例えば機能のお昼から夕方までとか。あるいは小学校の低学年の事が思い出せない、とか。」という尋ね方が適当であろう。
 交代人格の存在の聴取には慎重さを要する。多くの交代人格が治療場面を警戒し、またその存在を安易には知られたくないと考え、初診の段階では交代人格の存在を探る質問には否定的な答えしか示さない可能性もある。他方では初診の際に、主人格が来院を恐れたり警戒するために、かわりに交代人格がすでに登場している場合もある。診察する側としては、特にDID(解離性同一性障害)が最初から強く疑われている場合には、つねに交代人格が背後で耳を澄ませている可能性を考慮しつつ、彼らに敬意を払いながら初診面接を進めなくてはならない。「ご自分の中に別の存在を感じることがありますか?」「頭の中に別の自分からの声が聞こえてきたりすることがありますか?」等はいずれも妥当な質問の仕方といえるだろう。

<最近ブログがちょっと短か目という噂あり>