2013年6月28日金曜日

DSM-5における解離性障害 改訂版 (7)


明後日の日曜日は、北山先生の日本語臨床研究会である。楽しい一日になりそうだ。場所は帝京大学。医師になりたての頃北区の精神病院でお世話になったが(研修医という意味で、である)、会場はその近くである。

最後に、転換性障害の今後の扱いについて述べたい。転換性障害がICD-10DSMシステムで異なる扱いを受けている以上、ここで論じておくことに意味があるだろう。今回のDSM-5でも結局は転換性障害は解離と一緒になることはなかった。しかし両者の関係性は多くの識者が一致して合意するであろう。
 Şarら(Guz, et al, 2004 のトルコでの研究によれば、38人の転換性障害の患者をSCID-DSDQ-20等のテストにより調べたところ、48%が解離性障害の診断を満たしたという。ただし不安障害や身体表現性障害にはより高い相関を示し、少なくとも転換性障害と解離性障害がオーバーラップした障害であるとはいえなかったという。同じく別のトルコの研究では、転換性障害のうち解離性障害の基準を満たしたのは30.5%であったという。
これらの研究が示していることは、解離性障害と転換性障害は同一の疾患の別の表現形態というよりは、同類の、しかし性質の異なる病理の表現であるということだ。これらの両方を含めて解離と呼ぶか、あるいは一方を解離、もう一方を転換性障害と呼び続けるべきかはさまざまな議論があろう。しかし最近の「構造論的解離」理論にみられるような分類、すなわち精神表現性解離と、身体表現性解離という分類が適切と考える指揮者も多い。すなわち心的なストレスが精神面での解離を生んだ場合と身体面で表現されたものに分けるという考え方である(野間、岡野訳、構造的解離: 慢性外傷の理解と治療 上巻 基本概念編 / オノ・ヴァンデアハート  星和書店、2011年。)

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以上DSM-5に見られる解離性障害の診断基準についての解説を加えた。解離性障害についての理解や臨床研究の進歩が、この様な診断基準の変更の背景にあるということを示せたと思う。本論文は解離性障害の研究の変遷について述べるのがその趣旨であったが、DSM-5関係の記述だけで紙数が尽きてしまった(ナンのことだ)のが残念である。