Foote ら(2008) の研究から見えにくいこと
ここでこのフートらの研究からは見えにくい点について示したい。
先ず言えるのは、これをこのまま読むと、解離性障害 → 自殺企図増加 → 既遂自殺増加
という一直線の図式を頭の中で描いてしまう。つまり「解離症状は自殺を引き起こす危険なもの」という先入観を抱かせるのである。しかし実際に示されているのは、解離性障害は複数回自殺企図との相関を示すということである。つまり解離は自殺企図の「予測因子 predictor」とは言えるが、因果因子 causal factor とは言えない。
DIDの患者は確かに大きなトラウマを抱えている。しかし彼らにとっての解離は、少なくとも「危険因子」であるだけでなく「保護因子」として働いている可能性がある。
さて、では肝心の既遂自殺についてはどうなのだろうか?これについては十分な研究がないので、過去のエキスパートたちの記載を見てみよう。
F.Putnamら(1986):DID100例の研究では、71%に自殺未遂が、1%(一名)に 既遂自殺が見られた。またC.Ross&Norton (1989):236例の研究では、MPD/DID患者の 72% に自殺未遂がみられ、2.1% に既遂自殺が見られたとと報告している。さらにR.Kluft (1995) は DID患者6例の既遂自殺 を臨床観察として報告している。
ここで文献検索のまとめをしておく。
DIDでは確かに自殺企図および自傷の頻度が著しく高いことが繰り返し報告されている。ただし解離と自殺企図の因果関係は依然示されていない。
他方、既遂自殺率については十分な研究がなく、一部の報告では比較的低率である可能性も示唆されている。