ここで治療者が気まずい沈黙の後にどのような言葉を発するかが、この治療者のあくびに関連したエナクトメントが扱われるかどうかの鍵となる。 ここでいくつかの例を挙げてみよう。 1.治療者:「失礼‥‥」 これは最もシンプルな治療者の側の返しと言えるかもしれない。ただしここで終わってしまえば、このエナクトメントはそれとして実を結ばなくなる可能性がある。つまり治療者が暗に自分があくびをしたことを認めて謝罪することで、ここでのやり取りにピリオドが打たれてしまうことになるからだ。もちろんそれ以降に治療者がこの件に立ち返るか、患者の側が立ち返るかしてこの情緒的なやり取りが継続するかもしれないが、その場合は別である。
2.治療者:「私があくびをしたと思ったのですね。どのように感じましたか?」(解釈的)
これはある意味では最も古典的な応答ということになるかもしれない。このようなかかわりについて(解釈的)と記したのもそのような意味である。治療者はあくまであくびをしたかどうかについての自分の立場を明らかにせず、それを患者の心の探索に注意を向ける。そしてそれに素直に応じた患者が、「先生が私の話に退屈しているのではないかと心配になりました・・・・」などと応じて治療者が「これまでにも自分の話に対する相手の様子が気になることはありましたか?」などと聞くことで治療者はますます自分のあくびについてのアカウンタビリティを回避することになるだろう。