ただしこのような支持療法へのやや否定的な見方に変化が見られたのがここ数十年である。その間様々な実証研究が行われ、その結果として「表出的な精神療法が支持的療法と比較して特別効果を上げるわけではない」ということが明らかになってきたからだ。 ここで改めて表出的精神療法について解説するならば、それはかつて James Strachey が提唱したような、いわゆる「転移解釈」が決定的な治療作用 therapeutic action であるという考えに沿ったものである。そして精神分析が週4回以上であるのに対し、表出的精神療法はそれ以下の頻度、例えば週1回、2回で行われるが、基本的にはこの転移解釈を治療の根幹として維持するという立場に立ったものである。そして支持的精神療法はこれを必ずしも目指さないという点で、表出的精神療法に比べて効果が劣ったものという見方がされていたのである。
この半世紀ほどの間に行われた実証研究、例えば1970年代の米国メニンガークリニックの大規模な研究(いわゆる「PRP」)などは、あまり精神分析家にとって認めたくないような、いわば「不都合な真実」がいくつか浮き彫りになったことになる。それは支持的な関わりが治癒的な場合が多いらしいことであった。しかし一部の精神分析家にとっては長年掲げられてきた「モーセの十戒」、つまり解釈こそが分析の本質であるという掟は依然として健在であることも見て取れるのだ。
しかし考えても見よう。そもそも援助を求める多くの患者にとっては、治療が「いかに分析的か」は重要な関心事ではなかったはずである。彼らは生活において体験する何らかの苦痛や不全感から解放されることを第一にもとめて私たちのもとを訪れるのが一般的だからである。だからこれらの結論は決して患者たちにとっては「不都合」なことではなく、むしろ彼らが積極的に知らされるべき内容だったと言えるだろう。