解離と自殺傾向についてのレビュー
古典的には Ross & Norton (1989) のMPDの研究で、患者の72%が自殺企図歴を持っていたと報告され、「DIDでは自殺未遂が非常に多い」という考えの出発点になっている。
その後の研究でもDIDを含む解離性障害では自殺企図・自傷の頻度はかなり高いという点はかなり一貫している。
解離性障害患者の67%が反復的な自殺企図歴を、42%が自傷歴を報告したとされている。(ISSTDの成人DID治療ガイドライン(※)、Foote らや Ross & Norton らの研究を引用)。
※ International Society for the Study of Trauma and Dissociation (2011): Guidelines for Treating Dissociative Identity Disorder in Adults, Third Revision, Journal of Trauma & Dissociation, 12:2, 115-187
ここでFoote ら(2008) 精神科外来における解離と自殺傾向という論文を参照したい。(Dissociative Disorders and Suicidality in Psychiatric Outpatients
Foote, Smolin, Y. et al.;The Journal of Nervous and Mental Disease 196(1):p 29-36, January 2008.)
そこに述べられていることをまとめると以下のとおりである。
複数回の自殺企図歴を持つ患者に焦点を当てて分析したところ、解離性障害、境界性パーソナリティ障害、PTSD、アルコール乱用/依存のいずれもが、複数回自殺企図群と有意に関連していた。
しかし、これらの診断をすべてロジスティック回帰分析に投入すると、解離性障害診断と複数回自殺企図との関連のみが極めて強く残った(オッズ比 15.09、95%信頼区間 2.67–85.32、p = 0.002)。
解離性障害は、複数回の自殺企図歴を予測する最も強力な要因であった。
ただし既遂自殺については何も語っていない。
ちなみに以下はこの論文の抄録の日本語訳である。
解離性障害の患者が自殺企図の既往を報告することはよく知られているが、解離性障害患者と非解離性障害患者の自殺傾向を系統的に比較した研究はほとんど存在しない。
本研究の対象は、都市部の病院精神科外来に連続して受診した231名の患者であった。このうち82名については、解離性障害、境界性パーソナリティ障害、外傷歴を評価するための構造化面接(Dissociative Disorders Interview Schedule)および、PTSDと物質使用障害を評価するためのDSM-IV構造化面接(SCID)が実施された。
解離性障害と診断された患者群を、非解離性障害患者群と比較し、自傷行為および自殺傾向との関連を検討した。
その結果、解離性障害の存在は、自傷行為および自殺傾向のすべての指標と強く関連していた。
さらに、複数回の自殺企図歴を持つ患者に焦点を当てて分析したところ、解離性障害、境界性パーソナリティ障害、PTSD、アルコール乱用/依存のいずれもが、複数回自殺企図群と有意に関連していた。
しかし、これらの診断をすべてロジスティック回帰分析に投入すると、解離性障害診断と複数回自殺企図との関連のみが極めて強く残った(オッズ比 15.09、95%信頼区間 2.67–85.32、p = 0.002)。
解離性障害は、自殺研究においてしばしば見落とされてきたが、本研究の対象集団においては、複数回の自殺企図歴を予測する最も強力な要因であった。
ちなみにこの論文についてのAIのコメントは以下の通りだ。とても勇気づけられる。
君が今追っているテーマとの関係で言うと、この論文は実はとても重要なんだ。
なぜなら、この論文が示しているのは、「解離性障害は自殺未遂を予測する最強クラスの因子である」ということだけで、「既遂自殺が多い」とは一言も言っていないんだ。つまり、この論文はむしろ君のの問題意識、DIDや解離性障害では未遂は非常に多い。 しかし既遂は本当に多いのか?という問いをさらに鋭くする論文なんだ。フート自身はその問いには答えていない。彼が示したのは、「解離性障害の患者は、何度も自殺未遂を繰り返す傾向が非常に強い」という事実までなんだ。だから今君がが掘っているテーマは、実はFoote論文の“その先”にある問いと言えると思うよ。