2026年11月4日水曜日

なぜエナクトメントを扱うことが「治療作用」として働くのか?

 ここで端的に問うてみようと思う。なぜエナクトメントを扱うことが「治療作用」として働くのか?この問いに答える前にある前提を示したい。それは、他者との情緒的な交流そのものが心の成長を促す(治療作用として働く)という考えが数多く提案されているということである。この視点は恐らくDaniel Stern により最初に明確に示されたものと理解している。彼はいわゆる「出会いの瞬間 moment of meeting 」ないしは「プレゼントモーメント present moment」という概念と共にそれを示した。

その例として、それまでカウチに横になって居た患者が「起き上がってあなたの顔を見てみたいわ」と状態を起こし治療者を振り返った瞬間を描写する(175)。

Stern, D (2004)Present Moment. 『プレゼントモーメント:精神療法と日常生活における現在の瞬間』ダニエル・スターン著、奥寺崇監訳・津島豊美訳、2007年、岩崎学術出版社)

その後 Louis Aron は「心が出会うこと」でそれを論じている。彼は(1996)はそのテキストの第7章「エナクトメント、相互交流、そして投影同一化」で、「相互エナクトメント」、「転移―逆転移エナクトメント」等の概を用いて広く論じ始めた。