成田論で書き損なっていたこととして、それはは決して単なる支持療法ではないこと、ということを強調しておきたい。例えば成田はBPDの治療を通じて、自分の問題を患者自身が取り組むべきものとし、こちらに丸投げさせないことが大事であることを強調する。一方的に患者の愚痴を聞き続けるのは、こちらにも精神衛生上悪い。それに患者の側も、耳の痛い言葉に直面して自分が変わるということは確かにあるからである。そしてこのことと、成田の「正直に言う」ということは実は深く関係している。 「正直に言う」はある意味では患者に「言うべきことははっきり伝える」という態度表明でもある。そしてこれが大事なのだが、成田には「それで治療関係が結果的に切れたとしても、それはそれ」という姿勢が見える。成田はある患者との関係が終わる時にその患者にこう言われたという。「先生、口は災いのもとですよ」。これを彼自身が書いているということはとても教えられる。恐らく成田は長年の治療経験の中で、時にはズバズバものを言い、一部の患者は憤慨して出て行ってしまったということもあるのではないか。つまり治療関係はそれが終わらないように細心の注意を払うという類のものではないということを成田は教えてくれている。それはある意味では一期一会の関係であり、火花が散ることも十分あり得る。ある種の契約としてスタートした以上、どちらかが相手の振る舞いや治療を受ける(行う)態度に不満を感じて、関係を解消したくなることは十分ありうる。それも含めての治療関係と考えているようなところが成田にはある。