2026年8月11日火曜日

AIは信頼に足るのか? 6

 結局このテーマ、紆余曲折したが、次のような方向になった。キーワードは「自己欺瞞」である。

AIは信頼するに足るのだろうか。この問題を考えるためには、まず私たちが人間同士の対話において、どのような相手を「信頼できない」と感じるのかを考えてみる必要がある。もちろん、意図的に嘘をつき、相手を欺こうとする人を信頼できないのは言うまでもない。しかし、より微妙で、おそらくより日常的なのは、**自己欺瞞(self-deception)**の問題である。つまり他者に嘘をつく以前に、自分自身に小さな嘘をついている場合である。

自己欺瞞とは、自分にとって受け入れがたい事実や考えを十分に認識せず、それを覆い隠したり、別の説明によって正当化したりすることである。精神分析的に言えば、そこには否認や合理化、知性化などの防衛機制が関与している場合がある。
このような自己欺瞞は対話にも現れる。人は自分の主張に矛盾があることをどこかで感じながら、それを認める代わりに合理化し、時には強弁や詭弁によって自らの立場を守ろうとする。すると対話の目的は、互いに考えを深め、新しい理解に到達することではなく、自分が正しかったことを証明することへと変わってしまう。
そこにはしばしば自己愛の問題も関与する。相手の議論に正しさを認めることが、「自分が負けた」「自分が間違っていた」という羞恥や自己愛的な傷つきとして体験されるからである。その結果、人は一度口にした主張に縛られ、それを修正することがますます難しくなる。
ここから逆に、信頼できる対話者とはどのような人かが見えてくる。

(続く)