今、Belsky らの提唱している differential susceptibility(差異感受性モデル、以下、DS)(Belsky, J., & Pluess, M. (2009). Beyond diathesis stress: Differential susceptibility to environmental influences. Psychological Bulletin, 135(6), 885–908. )
について理解しようとしている。これが従来のストレス―脆弱性モデル(SD)にとって代わるものである以上、これを十分わかっておかなくてはならない。このDSの重要な点は、人がある環境による刺激に感受性が強いということは、必ずしも悪いことではなく、その欠如は、よりよい方向に働くという考えだ。
対比的に示そう(AI自身の言葉を借りて)。
ストレス―脆弱性モデル(SD)→ 感受性が高い人は「悪い環境でより悪くなる」
DSモデル(Jay Belsky)→ 感受性が高い人は「悪い環境でより悪くなる が、良い環境でより良くなる」
そこで重要になってくるのが、脆弱性 vulnerability の代わりに可塑性 plasticity という言葉を用いることの重要性だろう。そしてDSについて論じる上で一番有名なのは、5-HTTLPR(セロトニントランスポーター遺伝子多型)で、短い型(short allele)の人は、ストレス下 → 抑うつ・不安が増えやすいが、良い養育環境 → むしろ平均以上に適応が良くなるという結果がみられる。つまりSSの人ほど感受性(可塑性)が高いという例。 これ以外の例も知られる。よく出される例として、ドーパミン関連遺伝子(DRD4など)、行動抑制気質(inhibited temperament)、高反応性乳児(high-reactive infants)等があり、高反応性の赤ちゃんは不安定な養育 → 強い不安・問題行動だが、安定した養育 → むしろ非常に社会的・適応的になるという。 ちなみに私の好きな比喩は Thomas Boyce という人の言っている「dandelion theory(蘭とタンポポ)」モデルで、蘭(敏感)は悪環境で枯れるが、良環境で最も美しく咲くのに対して、タンポポ(鈍感)はどこでもそこそこ生きるというもの。(私が昔論じた過敏型自己愛の概念に似ている。) ドーパミン関連遺伝子については、7リピートの人は高感受性でnovelty seeking などが見られ、悪く働くと不良になり、よく働くと高い探索性や柔軟性、社会適応の良さなどに表われるという。日本人は2とか4リピートの低感受性なのであまり面白くない性格ともいえる。つまり極端に悪化する人も少ないが、伸びる人も少ないという。 ちなみにチャット君はこのセロトニントランスポーターやD4受容体の話は、実は一時騒がれたほど再現されていないという。つまりそこにはきわめて多くの遺伝子が関係していてあまりクリアーカットには説明できないらしい。