次に②の性依存についてである。こちらは「一見普通の男性の性加害性」に関係するだろうか? 性依存に関しては、当人を満足させるようなパートナーは不在である場合がほとんどだろう。一日中オーガスムを追い求めることを止められない男性の相手を務められるパートナーなどは普通は存在しない。したがって性依存はそのままポルノ依存などの形をとる事になり、他人を巻き添えにするというよりは、自分で苦しみ、その結果として家族なども巻き込むことになる。ただしギャンブル依存などと違い、金銭的な問題が発生しにくいことも不幸中の幸いと言えなくはない。(ただし毎日の風俗通いを止められないという場合には別であろう。) ちなみにこの②について、それが一つの疾患としてどの程度認定されているかについてはいろいろ議論がある。いちおうWHO発行のICD-11(2022年)には、CSBD(compulsive sexual behavior disorder 強迫性性行動症)として記載されていることを示しておこう。ところがもう一つの世界的な精神科の診断基準であるDSM-5(2013)にはそのような病名の記載はない。巷で言われる性依存の状態は、通常の依存症、すなわち薬物やギャンブルや買い物などの依存症と同類に扱うことが出来ないというのがDSM-5の立場なのである。
(以下略)