さて、ポジティブフィードバックはどんどん行動が強化されるのが特徴なのだが、それが生じるのがいわゆる依存症の状態である。そこでは側坐核という部分のグルタミン酸の信号が感作される(どんどん敏感になる)ことが知られている。
ここで少し事情を知っている人なら「うん?なんか変だぞ」という反応になるはずだ。「それってドーパミンの間違いじゃないの?」そう、依存症と言ったらドーパミンの問題と考えるのが相場だが、最近はドーパミンとグルタミン酸の両方が相まって嗜癖を形成するという。そしてドーパミンは「欲しい!」という気持ちを生むが、グルタミン酸はそのための行動に導く役割があるという。チャット君はそれを以下のように説明してくれる。
ドーパミン:その刺激が「快楽」や「報酬」として感じられる瞬間の「やる気スイッチ」。
グルタミン酸:「その行動をどうやってやるか」を記憶し、脳内にルートを敷く。
たとえば性衝動を例にとると、
ドーパミンが「見て!AVの画像!これは楽しいぞ!」と言い、
グルタミン酸が「いつもの流れでスマホを開いて、トイレにこもって、あのサイトに行こう」と導く、ということになる。そして結果的に「自動反応のような衝動的行動」が形成されるというのだ。
さてここから男性の性愛性に関する一つの議論が関係してくる。つまり男性の性愛性は一種の依存症だろうか。Prause らは、男性の性愛性は、addiction 嗜癖ではないと主張するという。そしてその 嗜癖なら起きるはずのグルタミン酸ニューロンの過敏さが起きないからだという。以下はチャット君のまとめ。
■ Prauseらの主張:CSBDは「嗜癖とは異なる」
◉ 核心的な神経科学的主張(簡単に)
もしCSBDが「依存症」であるならば、報酬系(特に側坐核:nucleus accumbens)において、グルタミン酸作動性のニューロンが過敏化しているはず
→ しかし、実験データではそうした反応は見られなかった(むしろ“habituation”=慣れが起きていた)
ちなみに依存症における側坐核の役割としては、
側坐核は報酬の予測・モチベーションの形成に関わる中枢。依存症では、glutamate(興奮性神経伝達物質)がこの部位で過敏化し、cue(刺激)への強烈な欲求(craving)を生む。この神経変化は、薬物、ギャンブル、アルコール依存などで明確に確認されている。しかしPrauseらは、性刺激に対してこの“過敏化”が起きていないと報告している。