2025年3月19日水曜日

関係論とサイコセラピー 推敲 1

 30日間かけて書いたこの論考の下書きが終わったので、今回から推敲に入る。(といってもこれを将来どこかに発表するという予定はないが。)

この論考は我が国の精神分析学界おいて過去10年余りの間議論ないしは論争が継続的に行われている、「週一回精神分析的サイコセラピー」というテーマに関して、新たな視点から考察を加えることを目的としている。 この「週一回」の議論は日本の精神分析の世界において大きな盛り上がりと学問的な進展をもたらしたものとして高く評価できると考える。しかしその議論の全体を俯瞰した場合、ある一つの視点ないしは概念により閉ざされているのではないかという懸念がある。それは精神分析がもたらす治癒機序について、J.ストラッキー以来の転移解釈を最善のものとするという前提である。しかし現代の精神分析は多元論的であり、治癒機序に関しても様々なモデルが提案されている。転移解釈に基づく治癒機序が週4回で達成できて、週1回では無理であるという議論がもし妥当であるとしても、それが多くの患者が現実に受けている週1回の治療の価値を考えるうえでの足かせになるとしたら、それは非常に残念なことだ。そして新たな視点から治癒機序を考えることでこの議論をさらに実り豊かなものにできるのではないかと考える。 「週一回精神分析的サイコセラピー」をめぐるテーマに関しては、それを包括する内容の学術書が昨年出版され、またそれと密接な関係にあるいわゆるPOST(精神分析的サポーティブセラピー、岩倉拓、関真粧美、山口貴史、山崎孝明、東畑開人著、金剛出版、2023年)という試みについての議論も興味深い。全体として言えるのは、我が国における若手の精神分析的な臨床家たちがこのテーマをめぐって議論を重ね、一つの流れを生み出していることであり、それは非常に頼もしく、また心強い動きであるということだ。私はたまたまそれらの著述に接し、書評をまとめる過程で様々なことを考える機会を得た。それが本論考を書く一つのきっかけとなったのである。 「週一回サイコセラピー」(以降は「週一回」と略記する)の流れについては、以下の書に詳しくまとめられている。

高野晶、山崎孝明編 (2024) 週一回 精神分析的サイコセラピー. 遠見書房.