臨床をすると同時に研究に携わっている者には、本や論文の出版は記念すべきことである。特に論文はそれがアカデミックな成果の証という意味では特別の意味を持っている。「ちゃんとまじめに勉強もしている」という風に自分で思いたいからだろう。しかし論文掲載までの道は遠い。とりわけそれが英語の論文であれば。
ということで私も英語論文で掲載されたものは数えるほどしかない。書いてはボツ、直してもボツ、最後はあきらめる、ということの繰り返し。めでたく受理されて掲載、というのはまれな出来事だ。しかし先日そのなかなか起きないことが起きて、英語の論文(といっても短い症例報告だが)が掲載された。
最近の英語論文は open access 流行りである。これは誰でもタダでダウンロードできるシステムのことである。そのかわり著者は膨大な掲載料を取られる。いわゆるハゲタカジャーナル(大した査読もなく、営利目的でオンラインで著者に高額をチャージして多くの論文を掲載してしまうジャーナル)ではなくても、それを支払わないと掲載しません、と編集部に迫られ、著者としては泣く泣くその掲載料を払うのだ。Nature や Science のような高名な雑誌に掲載されるために1000ドルあまりを著者が負担することになる。
ということで私も短いこの論文の掲載に1000ドル以上支払うことになった。うまくできたシステムであるが、どの程度営利目的なのかよくわからない。