2025年3月16日日曜日

関係論とサイコセラピー 27

 p834 からギャバ―ドさんが論じている幾つかの「二次的な方略 strategy 」の記述が面白い。彼はまず治癒機序としては二つのことを挙げる。それらは洞察を育てること fostering insight と作用機序の媒体としての関係性 “relationship as vehicle of therapeutic action” というのだが、これらは精神分析プロパーでもっぱら用いられる。そしてそれらに加えて精神療法ではいくつかの strategy があるとして5つを挙げる。あたかも精神療法の方がこれらの二次的な作戦を自由に使えるという意味ではより広い治療的な介入だよというような言い方をしているのが興味深い。もちろんギャバ―ドさんは、最初の二つが精神分析、二次的方略は精神療法、という風にはっきり分かれているわけではないよ、とくぎを刺している。ではそれらを以下に見てみよう。

1.変化についての明白な、あるいは非明示的な示唆

   suggestion

 2.  機能不全にある信念や問題行動や防衛への直面化

3.患者の意識的な問題解決や決断の仕方へのアプローチ

 4. 暴露

5.自己開示を含む介入


これらをもう少し詳しく説明しよう。

1.変化についての明白な、あるいは非明示的な示唆

フロイトは示唆を絶対に精神分析から排除するべきだと言ったわけだが、実際にはあらゆる解釈的なかかわりに示唆が含まれているという理論は多く聞かれる。

 2. 機能不全にある信念や問題行動や防衛への直面化。

これは言ってしまえば、認知療法じゃないか、ということになるかもしれない。でもこれは抑うつや不安症状を有する患者に特に有効であるという。なぜならそれらの症状はこの機能不全な思考により、さらに永続的になってしまうからだという。ここら辺はCBTを精神分析の世界に取り入れるというギャバ―ドさんのしたたかさを感じさせる。

3.患者の意識的な問題解決や決断の仕方へのアプローチ

ここには精神分析的とは言えないかなり具体的かつ指導的 directive なアプローチを意味する。

臨床例として、ある非常に適応してはいるが上司に対して感情的な反応をした患者について書かれている。そのような場合今にもアクティングアウトを起こしかねない患者に直接「指導」やアドバイスを与えることも、時には非常に大きな助けとなるというのだ。