それにしても私にとってのギャバ―ドさんは高知能の一つの到達点という気がする。(しかも彼は両親が俳優であったということもあり、若いころは実にイケメンだった。)そして彼の論文の書き方についてもその高知能ぶりがうかがえる。彼の論文は査読した人のだれもがそれぼボツにできないような書き方がなされている。だれも反対のしようのない構成をしているのだ。重要な提言はその一つ一つに典拠が示されている。またどの理論についても真っ向から否定せず、むしろそれを弁証法のもう一つの極として取り込むという姿勢に表れる。 彼はかなり関係論的な見方をする人であることはよくわかっているが、古典的な解釈中心の考え方もその有用な部分を見出し、それを取り込むのである。しかしこれは利点ではあっても欠点にもなりはしないか。彼のそのような意図をわかっていないと、何を言っているのかわかりにくい。多くの人にとってどっちつかずの wishy-washy な印象を与える。
ギャバ―ドさんはしかし彼の主張の根拠をしばしば最近の神経科学の知見におくという形でそれを盤石な形に仕上げる。「何と言っても現代の科学の進歩がその信憑性を証明してますよ」と言われると査読者としても反論しようがないではないか。
彼は精神分析にとって大切なのは次の二つだという。
1.無意識の連合ネットワーク unconscious associational netoworks の改変
2. 意識的な思考、動因、感情統御のパターンの改変
ここで1の連合とはどのようなものかと言うと、a.問題となるような情緒反応、b.問題となるような防衛反応、c,機能不全の対人パターンのトリガーとなるもの、であるとする。
このうち例えば情緒的な反応については、自己イメージと嫌悪感が結びついている場合を例に挙げている。これは無意識の連合ネットワークの一つの例だ。あるいは男性とみると怖い父親をすぐに思い出すとかの例も挙げられている。