2025年1月15日水曜日

統合論と「解離能」 4

 ところでこの発表をまとめている中で、私はISSTDのガイドラインそのものがどのように変遷しているかに興味を持った。ガイドラインは、初版が1997年に、第2版が2005年に、そして最新のものが2011年に出ている。(今回、このブログをまとめていて、1997年度版もネットで見つけることが出来た!前回は探し方が下手だったのだ。)これらのガイドラインには、統合か否かというテーマについての温度差がみられる。

例えば1997年度版は、「統合が全体的な治療のゴールである」とシンプルに述べているだけだ。

しかし2005年のガイドラインではこうなっている。

解離性障害の分野のエキスパートの大部分は、最も安定した治療結果とは、すべてのアイデンティティの融合、つまり 完全なる統合 、混ざりあい、そして分離の消失であることに同意する。」(p.13)

ところが2011年のガイドラインには変化がみられる。                      

リチャード・クラフトによれば、最も安定した治療結果とは、すべてのアイデンティティの融合、つまり 完全なる統合、混ざりあい、そして分離の消失である。(p.133)


つまり統合を推進するのは「大部分のエキスパート」から「クラフト先生」に、表現が代わっているのだ。この3つのガイドラインの記載のされ方からも、治療においては統合が必須という考え方が変化している事情が見て取れるだろう。