「メンタライゼーションと遊ぼう」(日本評論社)書評
本書は精神科医で精神分析家でもある池田暁史氏のメンタライゼーションに関する二冊目の書である。第一冊目は2021年の「メンタライゼーションを学ぼう」(日本評論社)で「こころの科学」に連載されたものをまとめた、いわば入門編としての解説書である。その姉妹書として2024年に出版された本書「メンタライゼーションと遊ぼう」はそのタイトルとは裏腹により専門家向けに書かれた学術書と言うべき重厚な内容となっている。(「~と遊ぶ」というタイトルの含みについては本書の中で解説されている。)
(中略)
ところで伝統的な精神分析の世界でトレーニングを受け育ったもの(著者もこの評者も含まれる)にとって、メンタライゼーションは実に悩ましい存在だ。それはれっきとした精神分析的な出自を持ちつつも、その範疇を逸脱するエネルギーを発し続ける。無意識や転移をあえて扱わず、週4回の分析的なセッションとは距離を置くという彼らの姿勢は挑戦的とすら感じる。そしてそれは逆に精神分析にその包容力の大きさを試しているかのようだ。そしてそのことについてフォナギーとベイトマンで温度差がることも本書に教えてもらった。
私は本書を読み、現在メンタライゼーションの世界で起きていることの一端を生々しく知ることが出来たように思う。そしてこれだけ高レベルでメンタライゼーションの現在について明らかにしてくれた池田氏の力業に驚嘆せずにはいられない。