2024年12月27日金曜日

男性の性加害性 推敲 11

 前々回に続いて「恥と自己愛トラウマ」の第11章をここで紹介しようと思う。10年前の私はかなりあけすけに自らの体験を語っているが、これも年齢的なものが影響しているのだろう。 この章の中で私は米国の女性はみなキュロットをはくという話、それに比べて日本の女子高生は短いスカートをはくこと、そんな女子高生をそのころ住んでいたアメリカの田舎町で目撃してものすごく浮いていて恥ずかしくなったことなどが語られ、最後に私はある標語を提案するのだ。

「キュロットで、まぶしい太ももを、健康な膝小僧へ。」

まあどうでもいい文章だが、この問題日常的な他愛のないレベルから加害・被害のレベルにまで至る傾向にあるのは確かだ。


第11章 見られることのトラウマとセクシュアリティ(2)

以下は「北山修のレクチャーアンドミュージック 第3回 2016年6月 NHK FM」からの抜粋である。このテーマに関する議論を展開している部分を抜き出してみたい。

黒崎(黒崎めぐみアナウンサー、司会者):話は尽きませんが、このあたりで、先生は伝えたいメッセージをお持ちということですが。
岡野:ああ、そうでしたね。精神科医というより一人の人間として。私は日本に帰って5年になりますが、カルチャーショックだったのは、女子学生のスカートが異様に短いということです。これにびっくりしました。アメリカの田舎町に住んでいた時に、その格好で来ていた日本人の女子学生がいたんですが、すごくおかしな格好に見えて、周囲から完全に浮いていました。アメリカ人も肌は出すんですよ。でもスカートじゃないんですよ。・・・・・・キュロット。 (沈黙ののち、笑い。)
北山(北山修、ホスト): アメリカ人はキュロットなんか着ています?
岡野: はい、短いのは確実にキュロットです。まあ、それで防衛しているというか。男性の劣情を誘うことを防いでいます。
北山: つまり下が開いているより、しまっているという方が、男の欲望を刺激しない、と言っているわけだ。
岡野:その通りです。
北山: でもアメリカではなんか、上は露出しまくっているじゃない。胸の谷間とか。
岡野: あ、例えばパーティのドレスなどは胸の谷間は、出すのが正装なんですよ。
北山: そうなんだ。でもそれは誘惑目的があるんでしょ? 
岡野: でも見慣れちゃうと、もうそうでもないんですよね。
北山:じゃあ、女子高生のスカートも見慣れれば、そうでもないんじゃないかな。
岡野:いやー、そうじゃないんじゃないかな。あのねーすごく特異な文化だと思う。日本は。この間私の一番お歳を召した患者さん、もう90歳になっているんだけれど、おっしゃっていました。「私は長年生きていて、こんな変なことは見たことがない」って。確かに現代の女子学生のスカートは短すぎで、おかしいとおっしゃいました。私は日本に帰ってからあの様子を見て、憤慨したんです。なんと日本の教師たちはひどいんだろう。あんなのを生徒たちにはかせて。そしたら私の妻が言いました。「何言ってんの。女の子たちが自分で短くしているのよ、と。」

黒崎: そうですよ。あえてたくし上げているという感じがあります。
岡野:ええ、それがまたカルチャーショックだったんですが。

北山:要するにかわいいんでしょ?

黒崎:足が長く見える、というのが女の子たちの言い分ですね。

岡野:それが彼女たちの言い分なんですか。それならおじさんたちの言い分としては、とにかく刺激しないでほしい。

北山:頼んでいるわけだ。

岡野:頼むよ、と。

北山:頼むから、キュロットにしてくれ、と。

岡野:この間新聞を読んでいたら、新潟県は女子高校生たちのスカートが一番短いんだと。そこで標語を作って、「勉強もスカートの丈も、やる気しだいでまだまだ伸びるんだ!」

北山:(大笑い)

岡野:こんな標語を作っても、なかなか伸びないだろう。それよりはキュロット。足はどんなに出してもいい、でもキュロットだ、という。

北山:でもあなたがどんなにお願いしても、キュロットがはやるということはないだろうね。

岡野:おそらく・・・はい。でもキュロットは見た目はまったく同じなんですよ。ただよく見ると間にスリットが入っているわけです。それでスタイルは変わりませんから。

北山:でも男の欲望というのは、今度はキュロットを見たら発情するとかいうことにはならないのかな。

岡野:それは一部はそうかもしれませんね。キュロットフェチとかね。(笑い) それは男のどうしようもないところですね。(笑い)

北山:でもあなたが言っているように、むしろキュロットであろうと、短いスカートだろうと、あなたが言っているように、じっと見れば、そのうち飽きるよ。

岡野:なるほど、私はもっと見るべきなんだ。

北山:そうだよ、見ないようにしているからじゃない?

岡野:なるほど、そうだったのか。ここら辺ぜんぜん打ち合わせと違う方向に行ってませんか?

黒崎:ということは西洋の方の胸の開いたドレスと同じように、見ているうちに慣れれば大丈夫と。

岡野:ということは北山先生はもうじっくりとご覧になったということですね。

北山:いや、というよりももう年ですね。(笑い)

岡野:なんだ、結論は結局そうなるんですね。

黒崎:女性としてはどう割り込んでいいかわからないんですが・・・女の子たちは、見られても大丈夫な下着にしているんですよね。

岡野:ああ、そうなんですか?

黒崎:ええ、ブルマーを下にはく、というのと同じような。あの当たりはどう考えたらいいでしょうかね。

岡野:うーん、・・・見たことないからぜんぜんわからないですね。(笑い)

北山:だから、もう少しゆっくり観察をしたら、慣れるかもよ。

岡野:私の作った標語はですね、「キュロットで、まぶしい太ももを、健康な膝小僧へ。」というんです。

(笑い)いいでしょ。女の子たちは健康な足をしているんだから、それがまぶしい太ももであってはならない。これは私の仕事とも関係しているのですが、性的な被害に遭われている方が多い。そういうことが少なくなるためにも、キュロットのことを学校の制服を考えるときに少しは考えていただければ、と思います。

(以下略)