2024年10月13日日曜日

解離における知覚体験 4

 サックスの「幻覚の科学」の第13章「取りつかれた心」(p.276~)は事実上解離性障害について扱っているという意味ではとても参考になる。最初にトラウマのフラッシュバックは、これまでのCBS、感覚遮断、薬物中毒、入眠状態などと基本的に異なるとする。つまりそれは本質的に過去の経験への「強制的回帰である」とする。それは「意味のある過去」だというのだ。そしてブロイアーやフロイトが扱ったアンナO.について述べ、解離の概念の重要さについても言及する。サックスもアンナO.に注目していたというのは興味深い。 ところでp.313には重要な記述がある。ブランケは「脳の右角回の特定の部位を刺激すると、軽くなって浮遊する感覚や身体イメージの変化だけでなく体外離脱体験も必ず起こることを実証することが出来た。」と言うという。「角回は身体イメージと重力に関係する前庭感覚を仲立ちする回路の極めて重要な結節点であり、『自己が体から解離する体験は、体からの情報と前庭情報を統合できない結果である』と推測している。」(p.313)と書いている。やはり統合できないのが問題だというのか。サックスでも。私には「外から眺めるという回路」が誰にでも備わっているという気がする。それが普段は眠っている状態なのが、解放されるのが解離である、という立場だ。