2024年10月12日土曜日

統合論と「解離能」推敲 3

 以下の部分は特に integration と fusion の使い分けに関して重要である。  「治療の帰結として最も安定しているのは final fusion (最終的な融合)complete integrtion (完全なる統合)であるが、そこまでに至ることが出来ないか、あるいはそれが望ましくない患者がかなり多い。」「この最終的な融合の障害となるものは、たとえば併存症や高齢である」(G133.) まずここで分かるのは、ISSTDの立場はintegration = fusion なのである。そしてガイドラインでは次のように述べる。「つまり一部の患者にとっては、より現実的な長期的な帰結(resolution 解決、とでも訳すべきだろうか?)という、協力的な仕組み cooperative arrangement であるという。それは最善の機能を達成するための、交代人格たちの間で十分に統合され、協調された機能である sufficiently integrated and coordinated functioning among alternate identities to promote optimal functioning.」(G134).(機能、という言葉がダブっているが、原文ですでにダブっているのだ。原文があまり推敲された感じではない)。そして治療によりこの最終的な融合に至るのは、16.7~33%であるとも書いてある。 ところで・・・唐突だがISSTDのガイドラインには二つの古いバージョンがある。1997年と2005年のものだ。このうち2005年のものをネットでダウンロードできたので、最新版(と言っても2010年だが)と比べてみようと思う。

"GUIDELINES FOR TREATING DISSOCIATIVE IDENTITY DISORDER (MULTIPLE PERSONALITY DISORDER) IN ADULTS (1997)1." Journal of Trauma & Dissociation, 1(1), pp. 115–116

Guidelines for Treating Dissociative Identity Disorder in Adults (2005)

International Society for Study of Dissociation Pages 69-149 

これは80ページにも及ぶものであるが、原稿のガイドラインも72頁だからそれよりも大部だったことになる。

ということで一番大事な部分を読んでみるとこう書いてある。P.13「解離性障害の分野のエキスパートの大部分は、最も安定した治療結果とは、すべてのアイデンティティの融合 fusion、つまり 完全なる統合 integration、融合 merger、そして分離の消失 loss of separateness であることに同意する。」「しかしかなりの数のDIDの患者が完全なる融合を達成できず、それが望ましいとは言えない。」あれ? これって2010年の同一箇所とほとんど同じではないか。しかし、である。最新バージョンでは、「クラフト先生は、最も安定した治療結果とは、すべてのアイデンティティの融合、つまり 完全なる統合、融合、そして分離の消失であるという。」つまり統合を推進するのは「大部分のエキスパート」からクラフト先生に代わっているのだ。これはどういうことだろうか。