2024年2月23日金曜日

家族療法エッセイ 推敲 2

  私は米国ですでに解離性障害の臨床に関わっていたが、2004年に帰国後に日本で出会うようになった解離性障害の患者さん達の語りは、明らかに米国とは異なっていると感じた。米国では解離性障害の原因として多く挙げられていたのが、幼少時の性的外傷であり、家庭内での実父や養父による性的外傷が主たる原因とされてきた。しかし日本のケースでは、母親との関係によるストレスやトラウマ、「関係性のトラウマ」とでもいうべき問題が発症により深刻に関係しているように思われたのだ。私は2007年にシカゴの国際解離トラウマ学会でこの問題に関する演題発表を行ない、またその結果を著書でも述べた(岡野、2007)。

岡野:解離性障害-多重人格の理解と治療 岩崎学術出版社 2007年。

シカゴでの発表で、私が帰国後最初の年に出会った5人のDIDの方の特徴を3つ挙げた。
1.幼少時の明白な性的虐待が関与しているケースは一例もなかった。
2.母親による精神的支配や虐待が3名いた。
3.現在(成人後)母親に精神的に支配されているという人が5人中4人いた。

 恐らく私のこの発表は若干時期尚早で、後に出会ったケースでは幼少時の性的外傷についても聞かれるようになったが、日本における母親問題については引き続き考えることが多い。そしてわが国では母子関係、特に母娘関係に関する様々な議論がなされていることに遅まきながら気が付いた。
 たとえば町沢(1997)はBPDを中心とした自験例に基づき、わが国では性的外傷は少ない一方で、母親による成熟停止を起こすような過保護が主たるものとした。(のちに町沢本人によりこの見解の一部は撤回された。)長谷川(2005)はその著作で、子供の示す精神科的な障害はしつけの後遺症である可能性があり、少子化による母子の孤立化の中での「支配―被支配」の関係に問題があるとする。また信田さよ子
(2023)はその近著で、母娘関係の背後にある父親の無責任さを強調する。その意味では「家族の縮図」にはこの父親不在の要素も重要な役割を演じているという事になるだろう。

町沢静夫(1997)ボーダーライン-青少年の心の病.丸善ライブラリー.
長谷川博一(2005)お母さんはしつけをしないで.草思社.

信田さよ子(2023)家族と厄災 生きのびるブックス.