2020年6月20日土曜日

新無意識 5


昨日の最後の部分から繰り返す。

つまりフロイトはこう考えた。「幼児期のトラウマは心に深刻な影響を及ぼし、それによる欲動の高まりの影響が無意識にとどまり、それが後に治療により扱われる」。そしてそれが無意識にとどまった理由は、それが幼児の性的願望と結びついており、それが罪悪感を生み、抑圧されていたからだ。」
ところが現在の臨床家は考える。「幼児期のトラウマは心に深刻な影響を及ぼし、その内容は解離されてしまい、それが後に治療により扱われる」。
精神分析 トラウマ → それによる欲動の高まりが無意識にとどまる。
解離理論  トラウマ  その内容は解離されてしまう。
ここで私が何を言いたいかと言うと、欲動、という迂回路を考えると、そこに無意識の要素がかかわってくるし、そうでないと、解離という概念が入り込んできて、これと無意識との関連があやふやになってしまう。そしてそこのところは精神分析理論では定説がないのである!!すなわち無意識を論じるのであれば、解離を含めたこの論点の整理が前提となるという事だ。

新・無意識
 さてこの解離の議論を持ち出す前に、もう一つの前提として、脳科学的な進展に伴う無意識概念の再考について述べなくてはならない。ここで私は新・無意識というタームを用いるが、これは脳科学的な意味での無意識ということだ。そして同時にAIやニューラルネットワークの議論が絡んでこざるを得ない。そもそもニューラルネットワークモデルは、人間の神経ネットワークを模した形で作られている。つまりはここにきて生物学とコンピューターサイエンスは融合したのである!!!

実は「新無意識 New Unconscious」という名前を冠した著書が在ることは以前から紹介している。(Hassin (Eds.) The New Unconscious. Oxford Press.2006) これを紐解けばわかるとおり、たくさんの論者が、最新の脳科学に依拠した様々な議論を寄せているのだが、実はこれを読んでみても、ニューアンコンシャスとは何ぞや、ということは残念ながらどこにも明言されていない。各章を担当する著者が、新しい脳科学的な知見が精神分析的な概念に与える影響を寄せ書きしているという感じであり、全体の統一はあまり取れていないのである。