2019年10月23日水曜日

べき乗則が支配する 推敲 4


以下の部分、推敲とは言え、ほとんど書き下ろしである。

  冪乗則は時間軸上に展開する
ここで少しまとめてみよう。地震においては、マイクロレベルでの岩(砂?)の微小な揺れを想定することで、そこからべき乗則が成り立つ様を想像した。ある状態においては、そこに存在する粒子がどれも同じように不安定なのである。この不安定さを私は「地面は常に揺らいでいるものだ」という、わかったようなわからないような言い方をしたが、そこには何か、地球全体を揺り動かしているような中心部分が想定されているかのようである。しかしおそらくそこに中心部分などない。それは近くの奥深くで流動しているマグマだ、と言う人もいるかもしれないが、ではマグマが自動的に動いているかといえば、部分部分のマグマは、マグマ全体の流れの中で動かされているとも言えるだろう。つまり揺らぎはあらゆる層で、あらゆるレベルで起きているのだ。ただしあらゆる大きさの岩石や砂粒が常に不安定かといえばそうではない。砂時計のフラスコに入っている砂は、制止した状態では動いていないし、それぞれの粒は安定しているように見えるだろう。ところがいったん砂時計を逆さにして上のフラスコから流れ落ちる砂の様子を見ると、たちまちそこに流動性と揺らぎを見て取ることが出来る。とすると地震のような現象においては揺らぎは瞬間的であり、一時的なものと言える。ある強い衝撃によりそのシステム全体が震撼し、あらゆるレベルにおいて揺らぎが生じるのだ。
この様に考えると、たとえばガラスを割った際の破片のフラクタルについても同様の類のものと考えることが出来る。大きな窓ガラスが割れた時のことを想像してほしい。いくつかの大きい破片と、かなり数の多い中型の破片、そして無数の砂粒ほどの破片になり、結局平均の破片の大きさは限りなくゼロに近くなる。それがフラクタル構造をなすというわけだ。ガラスは分子のレベルではランダムに配置されたアモルファス状態のために、連結の仕方にフラクタル性が現れるとされる(高安秀樹(1996)フラクタル構造と物性。精密工学会誌. 62: 1091-1095。)すると衝撃を受けて割れた際にまさにそのフラクタル構造が再現されることになる。
するとこんなことが言えないだろうか。ガラスにしても岩石にしても、それが生成される過程でのフラクタル性がいわば記憶されて、それが破壊の時に再生されるということではないか。ガラスが冷えて固化する状況を考えて欲しい。最初はほんの小さな構造が固まり出して、それから急速に大きな塊に発展する。その過程がフラクタル的であり、割れる現象とはその逆向きのプロセスが一挙に起きると考えるのである。
もちろん地震の場合はゆっくり冷えて固まったものがいきなり壊れる時に、そこのフラクタル性が現れる、というわけにはいかないであろう。冷えて固まったものがいくつかくっついたら、今度はその壊れ方は冷えた順番通りにはいかないだろう。でも冷えていく、あるいは結晶が作られていく過程そのものがフラクタル性を見せることがある。
この様に考えるとフラクタルには歴史性がかなり関与していることになりはしないか。小さな砂粒大のかたまりのずれが、場合によっては連鎖反応を起こして巨大な地震につながる、という場合、明らかに時間の流れに即した動きが読み取れる。しかしそこには逆向きの歴史も含まれているのだ。
そこでフラクタルが形成されるプロセスに特化して、それを見てみたい。