2016年5月17日火曜日

射幸心 ②

賭け事も立派に依存症を生む

あなたが誰かとコインの裏表でお金をかけるとしよう。(あくまでも想像上の話だ。実際にやるのは違法である。絶対にダメだ。私も神に誓って賭け事は一回たりともやったことはない。)表が出たらあなたが相手のお金、例えば100円を受け取り、逆に裏が出たら相手にそれを取られる。それをたとえば10回行うとしよう。あなたはそれに熱中するだろうか?おそらく。ある程度は。「遊技」としては悪くない。でもどうしてこれが面白いと感じられるのだろうか?確率から行ったら、あなたは10回の試みで、平均すれば儲けはプラスマイナスゼロになるだろう。100回でも同じはずだ。結局あなたはゲームをする前とした後で損も得もしないはずだ。それなのに、どうしてそれが面白いのか、ということになる。 
その秘密は、おそらく掛け金の存在にある。思考実験をしよう。掛け金をゼロにする。とたんにあなたは「そんなアホらしいことなんで出来ない!」いったいどうしてなんだろう?お金を賭けても、得する確率は変わらないのである!そして再びここに射幸心が潜んでいる。
 米国の精神科のバイブルとも言われている診断基準の最新版「DSM5」は2013年に発刊された。その中でギャンブル依存に関する分類が大きく変更された。それまでのDSMでは、ギャンブル依存は「衝動コントロール障害」に分類されていたが、DSM-5からは、「ギャンブル障害」として、「薬物依存、嗜癖障害」というカテゴリーと一緒になったのである。それもそのはずで、最近の研究が進む中で、 結局薬物依存とギャンブル依存は、脳の中で同じ部分が暴走しているということがわかったからだ。それはそうだ。このブログをお読みになっている方ならお分かりの通り、それらはいずれも「報酬系」の異常なのである。そこで最近わかったことは、ニアミスだけでなく、負けることが、さらにギャンブルの継続へと人を掻き立てることである。 ギャンブル依存が一種の嗜癖であるという事実は、最近のパーキンソン病についての研究からも明らかになったという。それはパーキンソン病の治療のために用いるドーパミン系の薬が、嗜癖を呼び起こすという臨床的な事実が関係していた。パーキンソン病とは、脳の中のドーパミンを作り出す細胞が萎縮し、枯渇してしまう病気である。御存知の通り、ドーパミンは、快感をつかさどるとともに、運動とも深く関連している。パーキンソン病ではドーパミンの量を脳内に増やす薬「ドーパミン剤」が用いられることになる。するとパーキンソンの治療を受けていた患者さんたちの中に、それまでまったく手を出したことのないギャンブルにはまる人が出てきたというのだ。つまりこういうことだ。報酬系というエンジンを動かしているいわばガソリンのようなドーパミンが人工的に増えると、およそかけことには縁がないという人まで賭け事中毒になる。彼らは薬物により二次的に生じた報酬系の暴走の犠牲者となってしまうのである。