2026年10月27日火曜日

成田先生のこと 推敲 23 

  さてこのような状況での治療者の本音を考えよう。例えば「確かに自分はこの患者のことをよくわかっているとは言えない。少なくとも簡潔に今起きていることを言葉に言い表すことはできない。その意味では確かにこの患者の言うとおりだ。」と考えているかもしれない。  そこで正直にその気持ちを「白状」したとしよう。たとえば「おっしゃるとおり、私はここでは治療者として十分なことはできていませんね」と言う。もちろんそれを開き直ったように堂々と言うのではなく、「大変残念なことではあるが」というニュアンスを込める必要はあるだろう。  ところが普通治療者はこのような「白状」をすることには抵抗を感じる。何よりもそうすることが自分にとって不利になると感じるからだ。それは治療者自身が持っている矜持、プライド、ないしは権威を損なう可能性があるからであろう。  しかしこのような時、治療者は別の気持ちも持っているはずである。「自分は一生懸命この人の話を聞いている。しかしそれでも『わかってもらえていない』と思われるとしたら、いったい自分はどうしたらいいのだろう?」という当惑の気持ちである。さらには「精一杯頑張っている自分が患者にどうしてここまで責められなくてはならないのか?」という怒りも感じるかもしれない。

        <以下略>