2026年9月10日木曜日

成田先生のこと 6

「精神分析と私」(精神分析研究 59(2)153₋159、2015)を読むと、精神科医成田の「メーキング」が見えてくる。最初に Rogers にひかれたことからわかる通り、彼の最初の、そしておそらく生涯を通しての関心は、患者と一緒の空間を通して相手を「わかる」とはどういうことかということだった。患者は色々な悩みを持って訪れるが、そこで治療者に分かって欲しいという気持ちは共通している。(もちろん、分かられたくない部分、簡単にわかってほしくない部分もあるだろうし、それ等の気持ちもわかって欲しいということになるだろう。) おそらくわかって欲しい自分と「わかっていない」自分のギャップと、そこからくる不甲斐なさが成田の原点にあるのだ。そしてその不甲斐なさを解決するために依拠したのは精神分析である必要はなかったのだ。ただしわかる、共感するという問題を扱う上であるヒントを与えてくれるのは精神分析だったのであろう。そして彼は無論それにのみ捉われるわけではない。

私が印象付けられるのは、成田が持っている理系的な探求心である。囲碁の高段者でもある成田は治療プロセスを理詰めで考え、理論化する事にも関心がある。従って彼には精神療法を体系化するような著書が多い。それらは以下のとおりである。『精神療法の第一歩』(診療新社、1981)『精神療法の経験』(金剛出版、1993)『心と身体の精神療法』金剛出版 1996 『精神療法の技法論』金剛出版 1999 『精神療法家の仕事 面接と面接者』金剛出版 2003 『セラピストのための面接技法 精神療法の基本と応用』金剛出版 2003 『治療関係と面接 他者と出会うということ』金剛出版 2005 『精神療法面接の多面性 学ぶこと、伝えること』金剛出版 2010 『精神療法を学ぶ 精神医学の知と技』中山書店 2011 『精神療法の深さ 成田善弘セレクション』金剛出版 2012