< 承前>
重要なのは、AIがそこで、「あなたは妻と母親を無意識的に同一視しているのです」と解釈する必要はないということである。むしろ、その反復に私の注意を向けるだけでよい。それによって私は、「なぜ私は二度もこんな言い間違いをしたのだろう?」と考え始めるかもしれない。そしてそこから自由連想が始まり、妻と母との間に自分でも気づいていなかった何らかの結びつきを発見する可能性がある。 私はこのようなAIの機能を、sounding board(反響板、壁打ち相手)あるいは sparring partner(スパーリング相手)としての機能と呼びたい。AIが治療者として機能するかどうか、あるいはAIとの間に本当の意味で「心の通い合い」が成立するかどうかとは別に、AIは私たちの言葉をいったん受け取り、それを何らかの形で照らし返すことができる。 その意味では、AI自身に心があるかどうかは、この機能にとって必ずしも決定的ではないのかもしれない。精神分析で分析家を「鏡」に喩えることがあるが、鏡が像を映し返すために、それ自身が心を持っている必要はない。少なくとも明確化(clarification)や直面化(confrontation)のレベルでは、AIは私たちがまだ十分に意識していない自分自身の言葉に注意を向ける助けになりうる。