2026年6月20日土曜日

甘え理論の先駆性 2

 土居先生のアメリカでの原体験については、「甘えの構造」にしっかり書かれている。そこを引用するならば以下の通りだ。

  • 「アメリカの精神科医は概して、患者がどうにもならずもがいている状態に対して恐ろしく鈍感であると思うようになった。言い換えれば彼らは患者の隠れた甘えを容易に感知しないのである」(同、p.16)

  • 「[米国では]精神や感情の専門医を標榜する精神科医も、精神分析的教育を受けたものでさえも、患者の最も深いところにある受け身的愛情希求である甘えを容易には関知しないという事は、私にとってちょっとした驚きであった。文化的条件付けがいかに強固なものであるかという事を私はあらためて思い知らされたのである。」(同、p.16)


これはかなりアメリカ人に喧嘩を売っているような表現と言える。このようなところを読む限り土居先生はかなり文化的なバイアスがかかった物言いをしていたことがわかる。ある意味では反米的で、渡米したころからかなり挑戦的であったことがわかる。しかしそれでいてとても英語が堪能で、早くから海外に出ることを考えていらっしゃった人でもある。
 アメリカ人に対する批判には歯に衣着せないものも含まれる。ある時メニンガークリニックに久しぶりに訪れた土居先生は、聴衆に向かって、「久しぶりにアメリカに来てみたら、太り過ぎの人がとても多くなってびっくりしました」と言ったという。すると聴衆の何人かは、席を立って帰ってしまったという逸話を聞いた。そういうところがあるのである。「甘えの構造」はさっそく英訳されて海外でも読まれるようになったが、これらの引用部分など、米国人が皆どんな思いで読んでいるのかとひやひやするところがある。