2025年7月13日日曜日

男性の性加害性 3

 ところで性依存=性嗜好障害+強迫的性行動症いう式のうち後半部分について。これがCSBD(compulsive sexual behavior disorder 強迫性性行動症)であり、ICD-11に掲載されている。これが持つ意味は大きい。そして事実ICD-11にはこれがかなり長々と記載されている。いわゆるポルノ依存のような状態だ。つまり性的行動を何度も何度も繰り返し、それによる苦痛を自分や他人に与えるという問題だ。ただしここで二つの点に注意すべきである。

1.これは強迫性障害 OCD とは別物であること。ICD-11には断り書きがあり、強迫的 compulsive という名前はついているものの、「本当の強迫ではない」というのだ。(CBDS is not considered to be a true compulsion. ) なぜなら通常のOCDに見られる強迫行為は基本的には快楽的ではなく、通常は不安を起こすような思考(つまり強迫思考 obsession ) を和らげるものであり、CBDSはその限りではないからだ。あくまでも性的な快楽を追求する点がCBDSの特徴だ。(ちなみに私はこのことを知らずに、「ああ、ICD-11は性行動の問題を強迫行為の一種としてとらえているんだね」と単純に思っていたのだ。しかしこれを読むと実はそれは嗜癖に近いと言っていることになるのだ。だってそもそも楽しい行為がやめられないって、依存症そのものじゃないか。でもあえて性依存という言葉を使っていない。それは現代の精神医学では、これが行動依存の一種であるかどうかの結論は出ていないから、というのである。だからこのCSBDは嗜癖の分類の中にではなく、衝動コントロール障害 impulse control disorder の下に収められているのだ。

2.DCM-5にはそもそもこのCBDSに該当するような診断が入っていないということ。つまりICD-11の立場、すなわちこれは正式な依存症でも強迫でもない、という立場は同じでも、それを診断基準に含めないという選択肢をとったのが、DSM-5だったのだ。だから両者の決定的な齟齬を意味してはいないことになる。