いま再来週の「愛着と共感」についての講義に向けてのスライドを見直しているが、改めてショアの愛着トラウマの理論と解離の関係の深さをうかがい知ることが出来る。ひょっとすると彼の解離の理論が一番大脳生理学的な理論に基づいたものと言えるのではないか。愛着関係において母親が子供の情動の嵐を収めることが出来ないと、子供の背側迷走神経系が発動されることになるが、これは事実上解離ということになる。Stephen Porges が自律神経についての理論を整備してくれたおかげでこのような理解が進んだと言えるだろう。しかしその解離が複数の人格の存在を促すというところがなんとも不思議なところだ。つまり解離は単なる自律神経系の異常にとどまるわけではなく、人間の心に全く異なる現象を生起させるのである。