2025年2月2日日曜日

ビリーミリガンを超えて 3

 Sybil についてであるが、2010年になってDebbie Nathan という作者の「シビルが暴露される ー 有名な多重人格の仰天な裏話 Sybil Exposed The Extraordinary Story Behind the Famous Multiple Personality Case」が発行された。それによると シビルは1973年の書籍及びそれについての映画によりたちまち有名になり、多重人格の報告例はそれまでも数十から一挙に数千に膨れ上がったという。Shirley Mason がシビルの本名であるが、彼女は自分が多重人格であると嘘をついていたという。彼女は厳格な「セブンスデー・アドベンチスト教会」の親に育てられ、情動的に不安定で精神科にかかったが、主治医のDr. Connie Wilbur が多重人格にとても興味を持っていることを知ってそのようにふるまったところ主治医は関心を示し、作家を誘い、書籍化を考えるようになったというのだ。

この本によるとShirlye Mason (シビル),Dr,Wilbur, 作家Schreiber の3人の共謀という書き方をしている。

これが本当であるとするならば、「DIDは複雑すぎて演技できない」というロジックさえあてにならないことになる。

ところでこの本の感想を書いている山形浩生の「経済のトリセツ」https://cruel.hatenablog.com/entry/20111201/1322666648 に一部気になる個所を見つけた。
本書は「シビル」後の三人の運命も描いている。シビルは、人格が統一されて治癒したことになっていたけれど、実は全然よくならず、また自分の正体が暴かれることを極度に恐れ、またウィルバー医師も、自分のやっていたことが公になるのを恐れていたので、シャーリー・メイソンが表に出ないようにおさえこみ、結果として二人は何とほぼ同居状態。そして名声は得たけれどもちろん臨床にきちんと活かせるようなものではなかったので、医学的なキャリアも低迷。またシュライバーも、「シビル」以降まともなものは書けず、三人で山分けしていたシビルからの収入も当然ジリ貧になって貧乏暮らしをよぎなくされ、そしてシャーリー・メイソンも晩年はウィルバー医師を看取ったあとに極貧の中で孤独死

これによると最後にシビルは統合されて治ったというわけではなかったというのだ。ということはやはりシビルは多重人格だったのか? いよいよ真相は分からない。