さてここからはパーソナリティ特性の問題についての解説だ。ディメンショナルモデルでは、まずPDを一つにしてしまい、それのあるなし、をまず示すということになったが、これは大胆な発想といえる。そしてその上でそのPDの特性を一つ上げなさいということだ。そしてその特性として挙げられるのが、ICD-11では否定的感情、離隔、対立、脱抑制、制縛性の5つだ。DSM-5でも似たようなものだが、制縛性の代わりに精神病性が加わった。)
ディメンショナルモデルに馴染みなない人は、この5つの特性に戸惑うはずだ。何しろいきなり「脱抑制」と言われても何のことかわからないだろう。しかもその対立概念が「誠実性」だ、つまり脱抑制とは誠実性の反対だと言われても当惑するばかりであろう。少なくとも「もう少しかみ砕いて言い表して欲しい」となるのではないか。
しかし不思議なもので、性格を測ろうとして因子分析を行った多くの研究は、結局は5つ、それも4つでも6つでもなく5つが浮かび上がってくるということが起きたという。だから5つがマジックナンバーなのだという(Feist,J, Feist G Theories of personality. p.401)。しかしその先駆けとなったRaymond Cattelはそれよりも多くのものを考え、Hans Eyesenckは3つを考えたという。彼は 神経症性、外向性、精神病性の3つを考え、それらは双極的である、とした。
つまり外向性⇔内向性、神経症性⇔安定性、精神病性⇔超自我ということである。ここで外向性は人と交わる傾向で、その反対は内向性だ。神経症性とは不安や抑うつなどの負の感情を抱く傾向であり、その反対は情緒安定性である。そして彼が後に加えた三つ目の精神病性とは自己中心で衝動的で反社会性、その反対は超自我的、である。
ちなみに神経症性=否定的感情、超自我的=誠実、精神病性=脱抑制的などと言い換えることが出来る。そして以上の話をまとめるとアイゼンクの3つの双極因子は以下のようになる。
情緒安定性 emotional stability ⇔ 神経症性 (否定的感情) neuroticism(negative affectivity)
外向性 extraversion ⇔ 内向性(孤立傾向) introversion(detachment)
超自我的(誠実性)superego(conscientious) ⇔ 精神病性(脱抑制的)psychoticism (disinhibition)
そしてこのアイゼンクの3つに対立⇔同調性、制縛性⇔??を加えるとICD-11の5因子になるというわけである。
ちなみにDSMでは以下の5つを選んでいる。
情緒安定性 ⇔ 神経症性(否定的感情)
外向性 ⇔ 内向性(孤立傾向)
同調性 agreeableness ⇔ 対立 antagonism
脱抑制 disinhibition ⇔ 誠実性
精神病性 ⇔ 透明性 lucidity