2021年7月3日土曜日

コロナと心理臨床(3k) 2

  コロナ禍が始まってからすでに一年半が経過している。ワクチン接種の普及により将来に明かりは見えているものの、いまだに終息の目途は立っていない。その間に私たちの心理臨床のあり方も様変わりしているあれから一年以上、これまでのような対面のセッションを持つことができていないケースもあるかもしれない。新型コロナの蔓延は間違いなく私たちにとっての試練となっているが、試練は私たちから学びの機会を奪うだけではない。新たな体験の機会も与える。コロナの影響下にある私たちがどのように臨床を継続できるのか、どのように継続すべきかという問題は、おそらく世界中のセラピストたちがこの一年半の間に直面し、そこから大きな学びの体験をも与えているはずだ。その結果としてセラピストの多くは何らかの対処を迫られ、それぞれが創意工夫のもとに対応を行っている。

一つ私たちの日常臨床を変えたのが、電話、ないしオンラインによるセラピーである。ソーシャルディスタンシングの重要性が強調される中で、面接室という密室の中でセラピストとクライエントが面接を行うことは、それ自体が感染のリスクを高めるのではないかというのは、私たちがこのコロナ禍が始まって当初はまず考えたことである。昨年4月に初めて緊急事態宣言が出された折は、対面による面接を全面的に中止した相談室も多かったであろう。すると残された手段は電話ないしオンラインということになる。対面による面接がしばらくは安定して継続的に行えない可能性に直面した私たちの多くは、当面はセッションを持たないよりは電話やオンラインという代替手段を用いることを検討し、また実行することとなった。そして改めてオンラインの持つ意味を考え直す機会を得ることとなった。
 そのような私たちの中には、コロナ禍の始まる前から、オンラインを治療の一つの手段として用いる試みが始まっていたことを知ったのではないか。よく知られる試みとして、2000年代の初めから、中国とアメリカの間でもっぱらオンラインによるトレーニングを行っている団体がある。その名前はCAPAThe China American Psychoanalytic Alliance)米中精神分析同盟?という。
 2001年にエリーズ・スナイダー Elise Snyderというアメリカの分析家が北京と成都に招かれたのが始まりであるという。その後米国と中国の関係者が協定を結び、それには北京と西安のメンバーが加わった。その後成都の分析家たちがアメリカの分析家たちに、スカイプでのトレーニングを申し入れ、コロンビア分析協会のDr. Ubaldo Leli という人がそれを受け入れて、事実上のCAPAが始まったという。2008年には2年のコースが作られた。現在では400人の生徒と卒業生がCIC (キャパチャイナ CAPAINCHINA)という団体を構成しているという。