2021年7月9日金曜日

嫌悪 14

 ドーパミン

 まず側坐核(NAc)や線条体、内側前頭皮質でドーパミンが放出されることが快感に結びつく、という事はよく知られている。ところが、中脳辺縁系でのドーパミンは、不快を回避する行動にも関わっているという。なになに?
 これはCabibらの実験と符合するという。ネズミは不快刺激から逃れた時にはドーパミンが放出されるが、逃れられない状態ではむしろ放出されなくなるという。

この急性の嫌悪刺激を逃れる時にはドーパミンが出るというのはわかる気がする。だって嫌悪刺激を逃れることは、やはり快感であろうはずだからだ。あるいは嫌悪を和らげるためにドーパミンを出しているとも考えられないか。なぜなら論文の別の個所では、急激な痛みはそれ自身がドーパミンの値を高めるとも書いてあり、ここら辺はその理由が分かっていないらしい。
しかしこれが慢性の嫌悪刺激になると、話が違ってくる。というのもその場合にはドーパミンは低下するといっているからだ。線維筋痛症の患者は、急な痛み刺激に対してあまりドーパミンは増えないという。しかしそれでも痛みの感覚は正常人より大きい。そこでこんな仮説があるという。
 急な嫌悪刺激によりドーパミンが上がるのは、それにより痛みを抑えようとしているからだ。つまり報酬とドーパミンの関係は確かなものであり、嫌悪刺激はそれに耐えられるように反応性にドーパミンが放出されるというのがこの仮説である。3ページ、下段)

 さてここでどうして肥満やむちゃ食いが慢性の嫌悪状態と関係あるのかについても書いてある。要するに砂糖を繰り返し与えるとドーパミンが繰り返し分泌されて、ダウンレギュレーションが起こり、ドーパミンの放出量が落ちてしまうというのだ。という事は肥満の人はそれだけ不幸という事か? いやいや、ネズミの実験ではそうなったというだけのことである。
 その次に書かれていることも同様だ。急性の嫌悪でドーパミンは出る。ところが飢餓などではドーパミンシステムがダウンレギュレーションを起こす。なぜなら脳内オピオイドが出されて、それにより何度もドーパミンが放出されるからだという。結局快でも不快でもドーパミンが出されて、結局ドーパミン放出が鈍化するというシステムになっているのだ。