2021年5月15日土曜日

どの様に伝えるか? 解離性障害 6

幻聴などの精神病様の現われ方をすること

 解離性障害のもう一つの問題は、それがしばしば精神病様の症状を伴うために、診断を下す立場の精神科医の目を狂わす可能性が高いということである。しばしば語られることであるが、DIDの患者さんはシュナイダーの一級症状を統合失調症以上に満たすとされる。このことをリチャード・クラフト先生が昔発表した時に、私たちはとても驚いたものだ。ちなみに以下の9つが一級症状である。

1. 対話性幻声 (問答形式の幻声、複数の声が互いに会話しているような幻聴)
2. 行動を解説する幻声 (自分の行為にいちいち口出ししてくる幻聴)
3. 思考化声 (自分の考えが声になって聴こえる)
4. 思考吹入 (他者の考えが自分に吹入れられる)
5. 思考奪取 (他者に自分の考えを抜き取られてしまうような感じ)
6. 思考伝播 (自分の考えが周囲につつ抜けになっているように感じる)
7. させられ体験 (感情、思考、行為が何者かにあやつられているような感じ)
8. 身体的被影響体験 (何者かによって身体に何かイタズラをされているような感じ)
9. 妄想知覚 (見るもの聞くものが妄想のテーマに一致して曲解・誤認される)

以下もウィキ様から引用する。

「1939年に発表されたもので、シュナイダー (Schneider,K.) はこの1級症状のうち一つ以上が存在すれば「控え目に」統合失調症を疑うことができるとした。 しかしクラフトは、DIDの可能性を示す主な兆候として15項目をあげ、その11番目に「妄想知覚を除くシュナイダーの第1級症状」をあげている。「身体的被影響体験」も解離性障害でみられることはまずないが、その2つ以外はむしろDIDに多く該当する。」

 ただしこの記述のうち、「身体的被影響体験は」私はしばしば耳にするのである。しかし自分の考えが声になる、自分の考えが相手に伝わる、あるいは妄想的な着想を得る、という話は解離の方からは聞かない。
「実際に統合失調症患者ではこのシュナイダーの1級症状の適合は1 - 3項目ぐらいであるに対し、DID患者では3.6項目とほとんど倍ぐらいである Kluft, 1987)。但しは見られなかったそうだ。」

 私はこの見解に賛成である。考想化声、思考伝播、妄想知覚以外のシュナイダーの一級症状はむしろDIDに頻繁に聞かれる。そしてこのことはある重要な疑義を呈しているのだ。果たしてシュナイダーが見ていたのは、統合失調症の患者だったのか、それともDIDとの混合だったのか。DIDの概念が精神科医の間で整備されていなかったことを考えると、シュナイダーやブロイラーがあっていた患者さんはひょっとしたら、DIDだったかもしれないのだ。これには歴史があり、スピッツァーなどの考えにより、させられ体験と会話しコメントする声は、DSMIIIに始まりICD-10に至るまで、統合失調症の診断の一部に組み込まれたくらいである。ところがDSM-5により大きく方針が変更となり、一級症状を重んじる立場は否定されることとなった。
  私がここで強調したいのは、統合失調症のようなメジャーな疾患でさえも、その診断基準や分類はその時代により大きく変わり、それはそれまでも常識をも覆すことがある。(破瓜型、妄想型、緊張型などの分類がDSM-5で消えてしまったことを考えればそれがよく分かる。)そしてそのことは「幻聴と聞いたら統合失調症」という従来の常識をも疑い直さなくてはならないという事を意味するのである。