2020年7月14日火曜日

ICD-11における解離性障害の分類 書き直し 8


6B61 解離性健忘Dissociative amnesia 

「重要な自伝的記憶、特に最近のトラウマ的ないしストレス的な出来事に関することがらを想起できず、それは通常の忘却としては説明がつかない。そしてその記憶喪失は、別の解離症の最中にのみ起こるものではなく、その他の精神的、行動的または神経発達障害によっても合理的に説明されることはない。 記憶喪失は、物質または薬物が中枢神経系に直接的影響(離脱効果を含む)を及ぼしたものではなく、神経系の疾患または頭部外傷によるものではない。」なお解離性健忘は解離性遁走が存在するか否かによりさらに分類される。すなわち遁走を伴うものは、「(健忘の間は)個人のアイデンティティを喪失し、長い期間(通常は数日から数週間の間)家や仕事や重要な他者のもとから旅立ち、その間に新たなアイデンティティを獲得することもある。」とされている。

6B13 トランス障害 Trans disorder 
6B14 憑依トランス障害 Possession Trance Disorder
「トランス障害と憑依トランス障害は、トランス状態(憑依のない)ないしは憑依トランス状態において、意識状態の不随意的で顕著な変化が頻回に、または単回の場合は持続的に生じることを特徴とする。トランス状態ないしは憑依トランス状態の大部分は短く一過性で、文化的ないしは宗教的な体験に関係する。」
 「トランス障害におけるトランス状態では、個人の意識状態の顕著な変化または個人のアイデンティティの通常の感覚の喪失が生じ、個人は直近の環境への気づきの範囲が狭まり、環境からの刺激の選択的な焦点化が生じ、運動、姿勢、および言動は僅かなレパートリーの繰り返しに限定され、それは自分では統御できないと感じられる。トランス状態は、別のアイデンティティによって置き換えられたという体験を特徴とはしない。トランスエピソードは再発性であるが、診断が単一のエピソードに基づく場合、それは少なくとも数日間継続したものである必要がある。トランス状態は不随意的で望ましくなく、集団の文化的ないしは宗教的な実践の一部として受け入れられたものではない。」
「憑依トランス障害では、個人の意識状態の顕著な変化が生じ、個人のアイデンティティの通常の感覚が外的な「憑依アイデンティティpossessing identity」に置き換わる。トランス状態は行動または運動が憑依主体によりコントロールされているように体験されることにより特徴づけられる。トランスエピソードは霊魂spirit、威力power、神的存在deity、そのほかの霊的存在に帰される。トランスのエピソードは再発性であるが、診断が単一のエピソードに基づく場合、それは少なくとも数日間継続したものである必要がある。」